協議離婚の慰謝料相場はいくら?原因別の金額相場と請求手順

協議離婚を考えていても、慰謝料についてはどう取り決めればいいか悩んでいる方は多いのではないでしょうか?
「性格の不一致」や「モラハラ」、「不貞行為」など離婚理由によって慰謝料の相場は大きく変わります。
協議離婚の場合は当事者同士の話し合いで決めるため、妥当な金額が分からず不利な条件で合意してしまうケースも少なくありません。
慰謝料を確実に受け取るためには、離婚協議書の作成や公正証書化など知っておくべきポイントがあります。
この記事では協議離婚における慰謝料の相場や請求方法、注意点について詳しく解説していきます。
法律の専門知識がなくても理解できるよう、具体例を交えながら分かりやすく説明します。
あなたの状況に合った慰謝料の知識を身につけて、公平な離婚条件を整えましょう。
協議離婚の慰謝料とは?
協議離婚の慰謝料とは、離婚に至った原因を作った配偶者が相手に対して支払う精神的苦痛に対する賠償金のことです。
夫婦間で話し合いによって離婚が成立する協議離婚では、慰謝料についても当事者同士の合意で金額を決めることができます。
裁判所が介入しないため、双方が納得できる金額で合意することが重要になります。
慰謝料は法律上の「不法行為」に基づいて請求するもので、相手の行為によって精神的な苦痛を受けた場合に請求する権利が生じます。
特に不貞行為やDV、モラハラなど明確な離婚原因がある場合は、慰謝料請求の根拠が強くなるでしょう。
一方で、単なる性格の不一致などの場合は慰謝料が認められにくいこともあります。
協議離婚での慰謝料は、離婚届の提出とは別に取り決めるため、書面で合意内容を残しておくことが大切です。
慰謝料の性質 | 精神的苦痛に対する損害賠償 |
---|---|
請求の根拠 | 民法第709条(不法行為) |
決定方法 | 協議離婚の場合は当事者間の話し合いで決定 |
主な離婚原因 | 不貞行為、DV、モラハラ、アルコール依存症など |
協議離婚の慰謝料は養育費や財産分与とは別物なので混同しないようにしましょう。
養育費は子どもの成長に必要な費用で、財産分与は結婚中に築いた財産の分配を指します。
これらとは別に、離婚の原因を作った側が支払う賠償金として慰謝料があるのです。
協議離婚における慰謝料の相場はいくら?
協議離婚での慰謝料相場は主に離婚原因によって大きく変わります。
一般的な慰謝料の相場は100万円~300万円程度といわれていますが、ケースによっては50万円以下から500万円以上まで幅があります。
離婚原因が重大なほど、慰謝料の金額は高くなる傾向にあります。
例えば、不貞行為が原因の場合、相手の収入や婚姻期間、子どもの有無などによって100万円~300万円が相場です。
DVやモラハラが原因の場合は、その程度や期間によって200万円~500万円になることもあります。
一方、性格の不一致のように明確な過失がない場合は、慰謝料が発生しないか、あっても少額になるケースが多いでしょう。
離婚原因 | 慰謝料相場 | 影響する要素 |
---|---|---|
不貞行為 | 100万円~300万円 | 不貞期間、回数、子どもへの影響 |
DV・モラハラ | 200万円~500万円 | 暴力の程度、期間、証拠の有無 |
アルコール・ギャンブル依存 | 100万円~300万円 | 生活への影響度、治療の有無 |
性格の不一致 | 0円~50万円 | 婚姻期間、別居の有無 |
家族との不和 | 50万円~150万円 | 介入の度合い、精神的苦痛の程度 |
注意したいのは、これらの金額はあくまで目安であり、法的に決められた金額ではないということです。
協議離婚では当事者間の合意で決めるため、相手の支払い能力や双方の状況によって柔軟に決められます。
とはいえ、あまりに相場から外れた金額を主張すると、合意に至らず調停や裁判に移行する可能性も高くなります。
慰謝料の金額交渉では、自分の受けた精神的苦痛の程度と相手の支払い能力のバランスを考慮することが大切です。

離婚原因別の慰謝料について
協議離婚で慰謝料を請求する際は、離婚に至った原因によって金額の相場や請求できる可能性が変わってきます。
ここでは代表的な離婚原因別に慰謝料請求の特徴を解説していきます。
性格の不一致が原因で協議離婚する場合の慰謝料請求
性格の不一致を理由に協議離婚する場合、基本的に慰謝料が認められるケースは少ないです。
これは「性格の不一致」という理由が、法律上の「不法行為」にあたりにくいためです。
互いの価値観の違いや生活習慣の違いは、一般的に損害賠償の対象となる不法行為とは見なされません。
ただし、「性格の不一致」という名目でも、実質的にはモラハラや生活費の放棄などの問題があった場合は慰謝料請求が可能です。
例えば、一方的に家を出て行き、生活費を支払わなくなった場合などは、単なる性格の不一致ではなく「婚姻義務の放棄」として慰謝料請求の対象になることがあります。
また、表面上は性格の不一致でも、実際には相手の激しい嫉妬や暴言があった場合は、それをモラハラとして立証できれば慰謝料請求の可能性が高まります。
性格の不一致による慰謝料の相場は、認められる場合でも50万円以下と低めです。
協議離婚の場合は、相手が支払いに応じるならば、比較的少額でも合意することで円満に解決できるケースもあります。

モラハラが原因で離婚する場合の慰謝料請求
モラルハラスメント(モラハラ)が原因の離婚では、明確な精神的苦痛があるため慰謝料請求の根拠が強くなります。
モラハラとは、暴言や無視、行動の制限など、言葉や態度による精神的な暴力のことを指します。
身体的な暴力を伴わないため証拠が残りにくく、立証が難しいという特徴があります。
モラハラによる慰謝料の相場は、その内容や期間によって100万円~300万円程度で、重度の場合は500万円以上になることもあります。
モラハラ被害を立証するためには、日記やメール、LINE、録音データなどの証拠を残しておくことが重要です。
特に協議離婚では、相手がモラハラの事実を認めないと慰謝料請求が難しくなるため、証拠の確保が非常に大切になります。
モラハラの種類 | 具体例 | 慰謝料の目安 |
---|---|---|
言葉によるもの | 人格否定、暴言、脅し、無視 | 100万円~200万円 |
行動の制限 | 外出禁止、友人関係の制限、財布の管理 | 150万円~300万円 |
経済的虐待 | 生活費を渡さない、使い道の監視 | 200万円~400万円 |
複合的なモラハラ | 上記が組み合わさったもの | 300万円~500万円 |
モラハラを理由に協議離婚する場合、相手が事実を認めず話し合いがまとまらないことも少なくありません。
そのような場合は、弁護士に相談して調停や裁判での解決を検討するのも一つの選択肢です。

不貞行為が原因で離婚する場合は不貞相手にも慰謝料を請求可能
配偶者の不貞行為(浮気・不倫)が原因で離婚する場合、浮気をした配偶者だけでなく、不貞行為の相手にも慰謝料を請求できます。
不貞行為は婚姻関係を侵害する明確な不法行為であり、慰謝料請求の根拠として最も認められやすいものです。
不貞行為による協議離婚での慰謝料相場は、配偶者に対して100万円~300万円、不貞相手に対して50万円~200万円程度が一般的です。
ただし、実際の金額は不貞行為の期間や回数、子どもへの影響、社会的地位の喪失などによって変動します。
不貞相手への慰謝料請求では、その相手が既婚者か独身かで金額が変わることもあります。
既婚者の場合は「二重の不貞」として、より高額な慰謝料が認められるケースもあるでしょう。
不貞行為を理由に慰謝料を請求するためには、不貞の証拠を集めておくことが重要です。
ホテルの領収書やツーショット写真、LINEのやり取りなど、不貞行為を証明できる資料があると有利になります。
協議離婚の場合でも、相手が不貞行為を認めない場合は証拠が必要になるので、計画的に収集しておきましょう。
なお、不貞相手への慰謝料請求は、不貞行為の事実を知ってから3年以内に行わないと時効となるので注意が必要です。

協議離婚で慰謝料を請求する手順
協議離婚で慰謝料を請求するには、基本的に当事者同士の話し合いが基本となります。
ここでは具体的な請求手順と、相手が支払いに応じない場合の対応方法について解説します。
協議離婚での慰謝料請求は、まず相手に請求の意思を伝え、金額の交渉をするところから始まります。
金額の根拠となる証拠(不貞行為の証拠、モラハラの記録など)を整理し、相手に示すことで話し合いがスムーズに進むでしょう。
合意に至った場合は、必ず書面(離婚協議書)にして双方で署名・押印することが重要です。
口頭での約束だけだと、後になって「そんな約束はしていない」と言われるリスクがあります。
慰謝料請求の基本的な流れは以下の通りです。
- 離婚原因に関する証拠を集める
- 相場を調べて請求金額を決める
- 相手に請求の意思と金額を伝える
- 話し合いで金額や支払い方法を交渉する
- 合意内容を離婚協議書に記載する
- 双方で署名・押印する
- 離婚届を提出し、慰謝料の支払いを受ける
場合によっては、弁護士に依頼して交渉を代行してもらうこともできます。
特に高額な慰謝料を請求する場合や、相手との関係が悪化している場合は、専門家に相談するのも一つの選択肢です。
- 相手が慰謝料の支払いに同意しない場合の対応
- 相手が慰謝料を支払う為の経済的余裕がない場合
相手が慰謝料の支払いに同意しない場合の対応
協議離婚で相手が慰謝料の支払いに同意しない場合は、いくつかの対応方法があります。
まず考えられるのは、家庭裁判所での離婚調停の申し立てです。
調停では裁判所の調停委員が間に入り、双方の主張を聞いたうえで合意形成を助けてくれます。
調停でも合意に至らない場合は、離婚訴訟を提起して裁判所の判断を仰ぐことになります。
裁判では証拠に基づいて慰謝料の金額が判断されるため、日頃から証拠を集めておくことが重要です。
もう一つの方法として、離婚は協議で成立させつつ、慰謝料請求だけを別途行うという選択肢もあります。
この場合、まずは内容証明郵便で正式に請求し、それでも支払いがなければ少額訴訟や民事訴訟で解決を図ることになるでしょう。
また、いきなり裁判や調停に進むのではなく、弁護士からの内容証明郵便で請求すると効果的な場合もあります。
法的な手続きを考えている場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
相手が慰謝料を支払う為の経済的余裕がない場合
相手に慰謝料を支払う経済的余裕がない場合でも、いくつかの対応方法があります。
まず考えられるのは、分割払いの合意です。
一括で支払えない場合でも、月々の収入から少額ずつ支払ってもらう方法があります。
分割払いにする場合は、毎月の支払額、支払日、支払期間、遅延した場合の対応などを詳細に決めておく必要があります。
また、財産分与との相殺という方法も考えられます。
例えば、本来なら財産分与で受け取れる金額から慰謝料分を差し引いて精算するという形です。
共有名義の不動産がある場合は、その持分を譲り受けることで慰謝料の代わりとする方法もあるでしょう。
相手の支払い能力に合わせた現実的な解決策を考えることが大切です。
慰謝料の金額にこだわりすぎると、結局は回収できない「紙切れ」になってしまう可能性もあります。
相手の経済状況を冷静に見極めて、確実に回収できる方法を選ぶことが賢明でしょう。
対応方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
分割払い | 相手の負担が少なく支払いやすい | 完済まで時間がかかる、途中で支払いが滞るリスクがある |
財産分与との相殺 | 別途支払いが不要で手続きが簡単 | 財産分与の対象となる財産が必要 |
不動産や動産での代替 | 一括で解決できる | 資産価値の評価が難しい |
支払い保証人を立てる | 回収の確実性が高まる | 保証人が見つからない可能性がある |

協議離婚で慰謝料を確実に受け取るためのポイント
協議離婚で合意した慰謝料を確実に受け取るためには、いくつかの重要なポイントがあります。
ここでは、離婚協議書の作成と公正証書化という2つの重要な手段について解説します。
- 離婚協議書を作成すること
- 離婚協議書を公正証書にすること
離婚協議書を作成すること
離婚協議書とは、離婚の条件について夫婦間で合意した内容を書面にしたものです。
協議離婚で慰謝料を確実に受け取るためには、必ず離婚協議書を作成し、慰謝料について具体的に明記しておくことが重要です。
離婚協議書に記載すべき慰謝料に関する項目は以下の通りです。
- 慰謝料の金額(総額)
- 支払方法(一括払いか分割払いか)
- 支払期日(いつまでに支払うか)
- 分割払いの場合は各回の支払額と支払日
- 支払いが遅れた場合の遅延損害金の利率
- 支払い方法(銀行振込、現金手渡しなど)
- 支払先の口座情報(必要な場合)
離婚協議書は法的な書式が決まっているわけではないので、当事者で作成することも可能です。
ただし、曖昧な表現や不十分な記載があると後々トラブルの原因になることも。
できれば弁護士などの専門家に相談して、法的に有効な書面を作成することをおすすめします。
離婚届は市区町村の窓口で提出するだけで受理されますが、離婚協議書の提出は必要ありません。
そのため、離婚届を提出する前に必ず離婚協議書を作成し、署名・押印を済ませておくことが重要です。
離婚協議書を公正証書にすること
協議離婚で合意した慰謝料をより確実に回収するためには、離婚協議書を公正証書にすることが効果的です。
公正証書とは、公証人が作成する公文書で、高い証明力と強制執行認諾文言を入れることで法的強制力を持たせられます。
公正証書にしておくと、相手が支払いを拒否した場合でも裁判を経ずに強制執行することが可能になります。
公正証書作成の手順は以下の通りです。
- 最寄りの公証役場に連絡して予約を取る
- 必要書類を準備する(身分証明書、印鑑証明書など)
- 離婚協議書の内容をもとに公正証書の原案を作成する
- 夫婦揃って公証役場に行き、公証人の面前で署名、押印する
- 公証人が内容を確認し、公正証書を作成する
公正証書作成には1~2万円程度の手数料がかかりますが、慰謝料を確実に回収するための保険と考えれば決して高くありません。
特に高額な慰謝料や分割払いの場合は、公正証書にしておくことで将来のトラブルを防げるでしょう。
なお、公正証書による強制執行を可能にするためには、「強制執行認諾条項」を入れることが必須です。
これがないと、支払いがなくても強制執行ができないので注意しましょう。
項目 | 離婚協議書 | 公正証書 |
---|---|---|
作成者 | 当事者(または弁護士) | 公証人 |
証明力 | 私文書としての証明力 | 公文書としての高い証明力 |
強制執行 | 裁判を経なければ不可 | 強制執行認諾条項があれば可能 |
費用 | 自分で作成すれば無料(弁護士依頼の場合は数万円) | 1~2万円程度 |
メリット | 費用が安い、柔軟な内容にできる | 法的強制力が高い、紛失リスクが少ない |

協議離婚の慰謝料請求における時効に注意
協議離婚における慰謝料請求には時効があるため、適切な期間内に請求しなければ権利が消滅する可能性があります。
慰謝料請求権の時効は「損害および加害者を知った時から3年間」または「不法行為の時から20年間」です。
例えば、配偶者の不貞行為を理由に慰謝料を請求する場合、不貞行為を知った日から3年以内に請求しなければなりません。
また、DVやモラハラなど継続的な行為の場合は、その行為が終了した時点から時効が進行します。
時効を中断させる方法としては、以下のようなものがあります。
- 裁判上の請求(調停や訴訟の申立)
- 債務の承認(相手が慰謝料の支払義務を認めること)
- 強制執行や仮差押え
- 内容証明郵便による請求
離婚協議が長引いて時効が近づいている場合は、内容証明郵便で正式に請求するなどの手段を取ることが賢明です。
離婚協議中に「慰謝料を支払います」という相手の言質を書面に残しておくことで、時効の進行を止められる場合もあります。
時効については専門的な判断が必要なケースも多いため、迷った場合は早めに弁護士に相談することをおすすめします。
時効の種類 | 期間 | 起算点 |
---|---|---|
短期時効 | 3年 | 損害及び加害者を知った時 |
長期時効 | 20年 | 不法行為の時 |
合意後の時効 | 10年 | 債務の承認がされた時(離婚協議書の作成時など) |
慰謝料請求は、離婚時にすぐに行わなければならないわけではありません。
時効の範囲内であれば、離婚後でも請求することは可能です。
例えば、離婚時には証拠が不十分だったが、後になって不貞行為の証拠が見つかった場合などは、離婚後に慰謝料請求できる可能性があります。
ただし、一般的には離婚時に一括して解決することが多く、離婚後の請求はトラブルになりやすいため注意が必要です。
よくある質問
ここでは、協議離婚における慰謝料についてよくある質問とその回答をまとめました。
具体的なケースでお悩みの方は参考にしてください。
- 熟年離婚の場合の慰謝料相場はいくらですか?
- 協議離婚後に相手の不倫行為が発覚した場合も慰謝料を請求できますか?
- 協議離婚で慰謝料を分割払いにする際の注意点を教えてください。
- 性格の不一致による離婚でも慰謝料の請求は可能ですか?
- モラハラが原因の離婚における慰謝料の相場はどのくらいですか?
- 離婚協議書に慰謝料の合意内容をどのように記載すればよいですか?
- 養育費と慰謝料の違いについて教えてください。
- 一方的に離婚を切り出された場合の慰謝料請求の方法を教えてください。
まとめ
協議離婚における慰謝料は、離婚の原因や相手の経済状況によって大きく変わります。
不貞行為やDV、モラハラなど明確な原因がある場合は100万円~500万円程度が相場ですが、性格の不一致では慰謝料が認められにくいことも覚えておきましょう。
慰謝料を確実に受け取るためには、離婚協議書の作成と公正証書化が効果的です。
特に支払い条件(金額・方法・期日)を明確にし、強制執行認諾条項を入れておくことで、将来の支払いトラブルを防げます。
また、慰謝料請求権には3年の時効があるため、早めの請求手続きが大切です。
離婚は感情的になりがちですが、冷静に証拠を集め、相手の支払い能力も考慮した現実的な対応をすることで、納得のいく解決につながるでしょう。