婚約破棄の慰謝料|請求が認められるケース、相場、注意点を解説

婚約破棄の慰謝料請求

婚約していた相手から突然「やっぱり結婚はやめよう」と言われたら、あなたはどうしますか?

婚約破棄は単なる交際の解消とは異なり、結婚という約束を反故にすることで、精神的な苦痛だけでなく、結婚準備のための費用や時間も無駄になってしまいます。

そんなとき、法的に慰謝料を請求できる可能性があることをご存知でしょうか?

婚約破棄による慰謝料は、婚約の成立と破棄の状況によって請求できるかどうかが決まります。

この記事では、婚約破棄で慰謝料が請求できるケースや相場、請求方法について詳しく解説していきます。

法律の専門知識がなくても理解できるよう、具体例を交えながら分かりやすく説明します。

目次

婚約破棄による慰謝料請求が認められるケース

「婚約したけど、相手から一方的に破棄された…」そんな辛い経験をした方は少なくないでしょう。

婚約破棄は単なる恋愛関係の解消とは違い、法的にも一定の保護が受けられる場合があります。

このセクションでは、どのようなケースで婚約破棄による慰謝料請求が認められるのか詳しく解説します。

婚約の成立とは?定義と成立条件

婚約とは、将来結婚することを約束する法律行為です。

法律上は明確な定義がありませんが、一般的に将来の結婚を前提とした約束であり、双方の合意が必要とされています。

婚約が成立するには、以下の要素が重要です。

婚約が成立するための要素
  • 将来の結婚を約束する明確な意思表示があること
  • 両当事者の合意があること
  • 社会的に婚約と認められる形式や儀式が行われていること(婚約指輪の交換、婚約式など)

婚約は口約束だけでも成立しますが、慰謝料請求する場合は婚約の事実を証明するものがあるとスムーズです。

例えば、婚約指輪の購入記録や婚約パーティーの写真、結婚式場の予約証明書などが婚約の証拠となります。

婚約破棄で慰謝料請求が認められるケース

婚約破棄による慰謝料請求は、すべてのケースで認められるわけではありません。

婚約破棄による慰謝料が認められるのは、主に相手に「不法行為」があった場合です。

裁判例では、婚約を一方的に破棄した側に法的、社会的に非難されるべき事情がある場合に慰謝料請求が認められています。

具体的には以下のような状況が該当します。

不貞行為があった婚約中に第三者と不適切な関係を持った
暴力、虐待があった身体的、精神的な暴力や虐待を行った
一方的な婚約破棄正当な理由なく突然婚約を解消した
経済的損害を与えた結婚準備のために支出した費用が無駄になった
社会的信用の失墜婚約破棄により社会的評価が下がった

ただし、「性格の不一致」や「価値観の相違」程度の理由では、一般的に慰謝料請求は難しいとされています。

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①不貞行為が原因で婚約破棄

婚約中に相手が浮気をした場合、これは慰謝料請求の大きな根拠となります。

婚約は将来の結婚を約束する関係であり、貞操義務や誠実義務が発生すると考えられているため、不貞行為は明らかな義務違反です。

例えば、婚約者が別の人と不適切な関係を持っていたことが発覚し、そのために婚約を破棄せざるを得なくなった場合は、精神的苦痛に対する慰謝料請求が認められやすいでしょう。

不貞行為が原因の婚約破棄による慰謝料相場は、一般的に50万円〜150万円程度と言われています。

ただし、不貞行為の証拠を集めることは難しい場合もあるため、LINE履歴やメール、目撃証言などの証拠を確保することが重要です。

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②暴力や精神的虐待による婚約破棄

婚約中に暴力や精神的虐待を受けて婚約を破棄した場合も、慰謝料請求の対象となります。

身体的暴力はもちろん、言葉による精神的な攻撃や威圧的な態度などもDV(ドメスティックバイオレンス)として扱われ、重大な違法行為になります。

例えば、以下のような行為は婚約破棄の正当な理由となり、被害者側からの慰謝料請求が認められるでしょう。

約破棄の正当な理由
  • 身体的暴力(殴る、蹴る、物を投げるなど)
  • 精神的暴力(暴言、脅し、無視、行動制限など)
  • 経済的暴力(生活費を渡さない、借金を強要するなど)
  • 社会的暴力(友人関係の制限、外出の禁止など)

暴力、虐待が原因の婚約破棄による慰謝料相場は、被害の程度によりますが、一般的に100万円〜200万円程度とされています。

証拠としては、診断書、写真、録音、第三者の証言などが有効です。

③正当な理由なく一方的に婚約を解消した場合

相手が正当な理由なく一方的に婚約を解消した場合も、慰謝料請求の対象となります。

特に結婚式の直前や、結婚準備が進んでいる段階での一方的な破棄は、精神的苦痛だけでなく経済的損害も大きいため、慰謝料が認められやすいでしょう。

例えば、結婚式場やドレスの予約が済んでいる状態で、特に理由もなく「やっぱり結婚はやめたい」と言われた場合などが該当します。

このケースでは、以下のような損害が考慮されます。

考慮される損害
  • 精神的苦痛への慰謝料
  • 結婚準備のためにすでに支払った費用(キャンセル料含む)
  • 引っ越しや転職など、結婚を前提に行った生活変更による損失

一方的な破棄による慰謝料相場は、準備状況にもよりますが、50万円〜100万円程度が一般的です。

ただし、キャンセル料などの実費も含めると、総額はさらに高額になることもあります。

④その他の要因による婚約の取り消し

上記以外にも、婚約破棄に対する慰謝料請求が認められるケースがあります。

例えば、婚約者による重大な嘘や欺瞞が発覚したケースでは、婚約時の重要事項について虚偽の申告があった場合、詐欺的行為として慰謝料請求の対象になります。

具体的には以下のような事例が考えられます。

具体的な事例
  • 既婚者が独身と偽って婚約していた
  • 重大な病歴や犯罪歴を隠していた
  • 多額の借金や負債を隠していた
  • 重要な家族関係(子供の存在など)を隠していた

また、第三者の不当な介入により婚約が破棄された場合も、その第三者に対して慰謝料を請求できる可能性があります。

例えば、親族が不当な理由で婚約を妨害した場合などが該当します。

これらのケースでの慰謝料相場は状況により大きく異なりますが、30万円〜100万円程度とされています。

婚約者の不貞による慰謝料は非課税扱い

婚約破棄に関連する慰謝料を受け取った場合、税金の扱いについても知っておくと安心です。

基本的に、婚約者の不貞行為を原因とする慰謝料は「精神的損害の賠償」として非課税となります。

民法上、慰謝料は「精神的損害の補償」という性質を持つため、所得税法上では非課税所得として扱われるのです。

ただし、婚約破棄に関する全ての金銭が非課税になるわけではありません。

後ほど解説する「手切れ金」など、精神的損害の賠償以外の性質を持つ金銭は課税対象となる可能性があります。

婚約解消に伴い過大な慰謝料を受け取ったときは?その課税の扱いを解説

通常の慰謝料の金額を大きく超える「過大な金額」を受け取った場合、税務署が全額を慰謝料と認めない可能性があります。

例えば、婚約破棄の慰謝料相場が50万円~100万円程度であるにもかかわらず、500万円もの金額を受け取った場合、相場を超える部分は「贈与」とみなされ、贈与税の対象になるリスクがあります。

税務署が慰謝料として認める金額の目安は、以下のような要素で判断されます。

税務署が慰謝料として認める要素
  • 婚約期間の長さ
  • 破棄された理由や状況
  • 結婚準備の進行状況
  • 実際に被った経済的損害の金額
  • 社会的地位や収入などの当事者の状況

過大な金額を慰謝料として受け取る場合は、金額の根拠を明確にした「示談書」を作成しておくことをおすすめします。

また、慰謝料と実費の補償(結婚式のキャンセル料など)を明確に区別すると、税務上のトラブルを避けやすくなります。

不安がある場合は、税理士や弁護士などの専門家に相談するとよいでしょう。

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「慰謝料」と「手切れ金」の定義と違いとは?

婚約破棄に関連する金銭的解決には、「慰謝料」と「手切れ金」という二つの概念があります。

この二つは混同されがちですが、法的な性質や税金の扱いが大きく異なるため、しっかり理解しておきましょう。

慰謝料の定義

慰謝料とは、精神的苦痛に対する損害賠償金のことです。

法的には、民法第710条に基づく「精神的損害に対する賠償」として位置づけられています

婚約破棄の場合、相手の不法行為(不貞行為や暴力など)によって精神的苦痛を受けたことを理由に請求します。

慰謝料は以下のような特徴があります。

慰謝料の特徴
  • 相手の不法行為が前提となる
  • 精神的苦痛の度合いによって金額が決まる
  • 裁判所の判断基準では「相当因果関係」が必要
  • 税法上は基本的に非課税所得として扱われる

慰謝料を請求するには、相手の「不法行為」と「精神的苦痛」の因果関係を証明する必要があります。

手切れ金の定義

手切れ金とは、法的な賠償義務がない場合でも、円満な関係解消のために支払われる金銭です。

言わば「けじめをつける」「関係を完全に清算する」という意味合いがあり、法的な権利というより道義的、倫理的な観点から支払われる性質のものです。

手切れ金の特徴として以下のような点が挙げられます。

手切れ金の特徴
  • 法的な請求権はなく、あくまで自主的な支払い
  • 金額に法的な基準はなく、当事者間の合意で決まる
  • 相手の不法行為が前提とならない場合もある
  • 税法上は原則として「贈与」とみなされ、贈与税の対象となりうる

例えば、「性格の不一致」による婚約破棄では、法的には慰謝料請求が難しい場合でも、道義的な責任から手切れ金を支払うことがあります。

解決金と慰謝料・手切れ金、それぞれの意味と役割の違い

「解決金」という言葉も婚約破棄の際によく使われますが、これは慰謝料と手切れ金の両方の性格を持ち合わせた総称的な意味合いを持ちます。

3つの金銭の性質を法的根拠、目的、税金の扱いの観点から比較すると以下のような違いがあります。

種類法的根拠目的税金の扱い
慰謝料民法第710条精神的苦痛への賠償原則非課税
手切れ金法的根拠なし円満な関係解消原則贈与税対象
解決金明確な区分なし総合的な問題解決内容により判断

解決金は、慰謝料的要素と手切れ金的要素を含む包括的な金銭のため、税務上の扱いも複雑になります。

税務上のトラブルを避けるためには、どの部分が「精神的損害への賠償」で、どの部分が「その他の理由による支払い」なのかを明確にした書面を作成しておくことが大切です。

弁護士に相談し、適切な示談書を作成することで、後々のトラブルを避けられるでしょう。

婚約破棄における慰謝料と手切れ金の相場

婚約破棄をめぐる金銭解決を考える際、「いったいいくらくらい請求できるの?」と疑問を持つ方は多いでしょう。

慰謝料や手切れ金の相場は状況によって大きく変わりますが、一般的な目安を知っておくと交渉の参考になります。

手切れ金の一般的な相場

手切れ金は法的な基準がなく、当事者間の話し合いで決まるものです。

一般的には、婚約期間や交際期間、関係の深さなどを考慮して決められることが多いです。

実際の手切れ金の相場としては、以下のような金額が目安とされています。

状況手切れ金の目安
婚約期間が短い(半年未満)10万円〜30万円
婚約期間が中程度(半年〜1年)30万円〜50万円
婚約期間が長い(1年以上)50万円〜100万円
結婚式の直前100万円〜200万円

ただし、これはあくまで一般的な目安であり、当事者の経済状況や社会的地位によっても大きく変わります。

例えば、高収入の男性が婚約を破棄する場合は、より高額の手切れ金が支払われるケースもあります。

また、結婚準備のために既に支出した費用(結婚式場の予約金やドレス代など)は、手切れ金とは別に実費として請求できることも多いです。

慰謝料の一般的な相場

婚約破棄による慰謝料は、破棄の理由や状況によって金額が大きく変わります。

不貞行為や暴力など、相手側に明らかな不法行為がある場合は高額になりやすい傾向があります。

以下に婚約破棄の理由別の慰謝料相場を示します。

婚約破棄の理由慰謝料の目安
不貞行為(浮気、不倫)50万円〜150万円
暴力、DV、虐待100万円〜200万円
重大な嘘や詐欺的行為50万円〜150万円
一方的な破棄(結婚直前)50万円〜100万円
親族の不当な介入による破棄30万円〜80万円

ただし、これらはあくまで過去の裁判例や示談例から導き出された一般的な相場であり、個々のケースによって金額は異なります。

また、慰謝料の金額に影響を与える要素として、以下のような点も考慮されます。

慰謝料の金額に影響を与える要素
  • 婚約期間の長さ
  • 婚約破棄による精神的苦痛の度合い
  • 結婚準備の進行状況
  • 当事者の年齢や再婚の可能性
  • 当事者の社会的地位や経済状況

慰謝料請求を検討する場合は、弁護士に相談して自分のケースに適した金額を見極めることをおすすめします。

婚約破棄に伴う手切れ金が贈与税の対象となることもある

先ほど説明した通り、慰謝料と手切れ金では税金の扱いが大きく異なります。

特に手切れ金については、金額や支払われた経緯によっては「贈与」とみなされ、贈与税が課税される可能性があります。

国税庁の見解では、精神的苦痛に対する賠償という性質が明確でない場合、「婚約破棄に伴う金銭の支払い」は贈与税の対象となり得るとされています。

例えば、以下のようなケースでは贈与税の対象になりやすいでしょう。

贈与税の対象になりやすいケース
  • 相場を大きく超える高額な手切れ金
  • 明確な慰謝料請求権がない状況での支払い
  • 支払う側に法的責任がないのに支払われた金銭
  • 「贈与」と解釈されるような表現で合意された場合

贈与税の基礎控除額は年間110万円なので、この金額を超える手切れ金を受け取った場合は注意が必要です。

税務上のトラブルを避けるためには、婚約破棄の示談書や合意書に以下の点を明記しておくとよいでしょう。

示談書や合意書に明記すべ点点
  • 金銭の性質(慰謝料、損害賠償、費用の補償など)
  • 支払いの理由や根拠
  • 精神的苦痛の内容
  • 実際に被った経済的損害の内訳

税金の問題は複雑なので、高額な金銭を受け取る場合は税理士や弁護士に相談することをおすすめします。

婚約破棄による慰謝料請求時に注意すべきポイント

婚約破棄による慰謝料請求を考えている方は、いくつか注意すべきポイントがあります。

ここでは、実際に慰謝料請求をする際の注意点や難しさについて解説します。

慰謝料金額の算定が難しい状況である

婚約破棄の慰謝料金額を決める明確な基準はありません。

慰謝料は精神的苦痛に対する賠償という性質上、客観的な金額算定が難しいという特徴があります。

一般的な相場はあるものの、実際の金額は以下のような要素によって大きく変わります。

慰謝料金額を左右する要素
  • 婚約期間の長さ
  • 婚約破棄の理由や状況
  • 被った精神的苦痛の度合い
  • 結婚準備にかけた費用や時間
  • 当事者の年齢や社会的立場

慰謝料の金額が折り合わず交渉が長引くことも多いため、弁護士に相談して適切な金額設定をすることが重要です。

また、過去の裁判例を参考にすることで、より現実的な金額を提示できるでしょう。

婚約の証拠を示すのは簡単ではない

婚約破棄による慰謝料請求で最初にぶつかる壁は、「婚約が成立していたこと」を証明する必要があることです。

口約束だけの場合、婚約の事実を客観的に証明するのが難しいという問題があります。

婚約の証拠として有効なものには以下のようなものがあります。

有効の証拠
  • 婚約指輪の購入記録や写真
  • 婚約式や顔合わせの写真
  • 結婚式場やドレスの予約証明書
  • 結婚を前提とした会話が残るLINEやメール
  • 両家の親族への結婚の挨拶を証明できる証拠
  • 婚姻届の下書きや婚前契約書

こうした証拠がない場合、婚約の成立自体を否定されて慰謝料請求が困難になる可能性があります。

特に相手が「単なる交際関係だった」と主張した場合に備え、婚約の事実を証明できる証拠を日頃から残しておくことが大切です。

慰謝料請求に必要な証拠収集の重要性

婚約破棄による慰謝料請求では、婚約の成立証明だけでなく、相手の不法行為を証明する証拠も重要になります。

特に慰謝料請求の根拠となる相手の不法行為(浮気、暴力、一方的破棄など)を裏付ける証拠収集は必須です。

有効な証拠として以下のようなものが考えられます。

不法行為の種類有効な証拠例
不貞行為(浮気)・浮気相手とのLINEやメール
・デート現場の写真
・目撃証言
暴力、DV・診断書や医療記録
・暴力の痕跡の写真
・暴言などの録音
一方的な婚約破棄・突然の破棄を示すメール等
・結婚準備の進行状況の証拠
・破棄の理由が不当であることの証明
詐欺的行為・重要事実を隠していた証拠
・虚偽の事実を述べていた証拠

証拠収集は早い段階から計画的に行うことが重要です。

ただし、違法な手段での証拠収集(盗撮、盗聴、無断での個人情報収集など)は避ける必要があります。

証拠収集に不安がある場合は、弁護士に相談して適切な方法をアドバイスしてもらいましょう。

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慰謝料請求の基本的な流れを把握しておく

婚約破棄による慰謝料請求の一般的な流れを理解しておくことで、見通しを立てやすくなります。

基本的な流れは以下のようになります。

慰謝料請求の手順
  1. 証拠の収集と整理
  2. 弁護士への相談(任意)
  3. 相手への内容証明郵便の送付(請求の意思表示)
  4. 話し合いによる示談交渉
  5. 示談が成立しない場合、調停の申立て
  6. 調停が不成立の場合、訴訟の提起
  7. 判決または和解による解決
  8. 支払いの履行確認

多くの場合、3〜4の段階で解決することが多く、裁判まで進むケースは比較的少ないです。

特に内容証明郵便は、相手に請求の意思を明確に伝え、法的手続きに発展する可能性を示すことで、示談交渉を有利に進められる重要なステップです。

内容証明郵便には、婚約の事実、破棄の経緯、請求金額とその根拠、返答期限などを明記します。

相手が慰謝料支払いを拒否した場合の対応方法

婚約破棄の慰謝料請求をしても、相手が支払いを拒否するケースは少なくありません。

相手が支払いを拒否した場合、法的手続きを段階的にエスカレートさせていくことになります。

具体的には以下のような対応が考えられます。

慰謝料支払いを拒否した場合の対応策
  • 弁護士名での通知書を送付する
  • 家庭裁判所に調停を申し立てる
  • 訴訟を提起する

弁護士名での通知は、相手に法的な圧力を感じさせ、話し合いに応じさせる効果があります。

調停は裁判より手続きが簡単で費用も安く、話し合いによる解決を目指します。

それでも解決しない場合は訴訟となりますが、訴訟には時間と費用がかかるため、費用対効果を考慮する必要があります。

訴訟で慰謝料請求が認められても、相手に支払い能力がない場合は回収が困難になる可能性もあるため、相手の資力も考慮すべき要素です。

慰謝料請求にかかる費用が不安ならどう対応すべき?

慰謝料請求にはある程度の費用がかかるため、その点も考慮する必要があります。

法的手続きにかかる費用と請求できる慰謝料の金額を比較して、費用対効果を検討することが重要です。

主な費用としては以下のようなものがあります。

手続き段階かかる費用の目安
弁護士相談初回無料〜5,000円程度
内容証明郵便1,500円程度
弁護士への依頼(示談交渉)着手金10万円〜30万円程度
調停申立て収入印紙1,200円+α
訴訟提起請求額に応じた収入印紙代+弁護士費用

弁護士費用を抑える方法としては、以下のような選択肢があります。

弁護士費用を抑えるコツ
  • 法テラスの無料法律相談を利用する
  • 弁護士費用の分割払いを相談する
  • 成功報酬型の料金体系を採用している弁護士を選ぶ
  • 弁護士保険(権利保護保険)に加入していれば活用する

請求額が少額の場合は、弁護士に依頼せず、自分で内容証明郵便を送る方法もあります。

ただし、請求額が100万円を超える場合や、相手との関係が複雑な場合は、専門家に依頼することをおすすめします。

慰謝料請求がスムーズに進まない場合もある

婚約破棄による慰謝料請求は、必ずしもスムーズに進むとは限りません。

様々な障害が生じる可能性があるため、時間や精神的な負担も考慮して、慰謝料請求を行うかどうか判断することが大切です。

慰謝料請求がスムーズに進まない主な理由としては以下のようなことが考えられます。

慰謝料請求がうまくいかない理由
  • 相手が連絡を拒否したり、居所不明になる
  • 証拠が不十分で請求の正当性を証明できない
  • 相手に支払い能力がない
  • 相手が反論や反証を提示してくる
  • 裁判所での手続きが長期化する

このような状況に備えて、以下のような対策を考えておくとよいでしょう。

実行すべきこと
  • 早い段階から証拠を十分に収集しておく
  • 相手の居所や勤務先など基本情報を確認しておく
  • 相手の資産状況をある程度把握しておく
  • 請求額は現実的な範囲に設定する
  • 精神的なサポート体制を整えておく

また、慰謝料請求よりも早期解決を優先したい場合は、請求額を下げてでも示談で解決するという選択肢も考慮すべきです。

法的手続きによる解決は時間と労力がかかるため、「いつまでに解決したいか」という時間的な視点も大切にしましょう。

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よくある質問

婚約破棄の慰謝料に関して、よくある質問とその回答をまとめました。

疑問点の解消にお役立てください。

よくある質問
  • 婚約破棄の慰謝料相場はどのくらいですか?
  • 性格の不一致による婚約破棄でも慰謝料は発生しますか?
  • 婚約破棄の慰謝料を請求された場合、払わなくていい条件はありますか?
  • 婚約破棄の慰謝料が高すぎると感じた場合の対処法を教えてください。
  • 口約束だけの婚約でも慰謝料請求は可能ですか?
  • 婚約指輪の返還と慰謝料は別問題ですか?
  • 婚約破棄の慰謝料の計算方法について教えてください。
  • 婚約破棄の慰謝料請求で弁護士に相談すべき事例を教えてください。
  • 婚約破棄の慰謝料請求には時効がありますか?
  • 妊娠中の婚約破棄における慰謝料の特徴はありますか?

婚約破棄の慰謝料相場はどのくらいですか?

婚約破棄の理由や状況によって異なりますが、一般的には30万円〜150万円程度です。

不貞行為や暴力が原因の場合は高額になり、単なる性格の不一致などでは低額になる傾向があります。

性格の不一致による婚約破棄でも慰謝料は発生しますか?

法的には「性格の不一致」だけでは慰謝料請求の根拠としては弱いですが、結婚準備が進んでいた場合や一方的な破棄だった場合は、請求できる可能性があります。

実費の補償として請求するという形が望ましいでしょう。

婚約破棄の慰謝料を請求された場合、払わなくていい条件はありますか?

正当な理由(相手の不貞行為や詐欺的行為など)がある場合や、婚約の成立自体を証明できない場合は支払い義務がない可能性があります。

また、すでに結婚式場のキャンセル料などを支払っている場合は、その金額分を減額できることもあります。

婚約破棄の慰謝料が高すぎると感じた場合の対処法を教えてください。

相場と比較して根拠を示しながら交渉するのが基本です。

弁護士に相談して反論の内容証明を送付したり、調停や裁判で適正額を主張したりすることもできます。

一般的な相場や類似事例を調査して、妥当な金額を提示するとよいでしょう。

口約束だけの婚約でも慰謝料請求は可能ですか?

口約束だけでも婚約は成立しますが、証拠がないと主張が難しくなります。

LINEやメールでの結婚に関するやりとり、第三者への婚約の報告、結婚準備の証拠などがあれば、婚約の成立を証明する材料になります。

婚約指輪の返還と慰謝料は別問題ですか?

はい、別問題です。

婚約指輪は原則として婚約破棄の原因を作った側が返還義務を負います。

慰謝料とは別に、婚約指輪の返還または相当額の支払いを請求できます。

ただし、長期間の使用や紛失の場合は減額される可能性があります。

婚約破棄の慰謝料の計算方法について教えてください。

明確な計算式はありませんが、①精神的苦痛に対する賠償と②実際に被った損害(結婚式のキャンセル料など)を合算します。

精神的苦痛の程度は、婚約期間、破棄の理由、当事者の年齢や社会的立場などから総合的に判断されます。

婚約破棄の慰謝料請求で弁護士に相談すべき事例を教えてください。

高額な慰謝料(100万円以上)を請求したい場合、相手が支払いを拒否している場合、複雑な事情がある場合(不貞行為や暴力など)、証拠が不十分な場合などは弁護士への相談をおすすめします。

弁護士は証拠収集や適切な金額設定のアドバイスをしてくれます。

婚約破棄の慰謝料請求には時効がありますか?

はい、時効があります。

不法行為に基づく損害賠償請求権の時効は、損害と加害者を知った時から3年、または行為の時から20年です。

婚約破棄の場合、破棄の意思表示を受けた時または破棄の事実を知った時から3年以内に請求する必要があります。

妊娠中の婚約破棄における慰謝料の特徴はありますか?

妊娠中の婚約破棄は一般的なケースより高額の慰謝料が認められやすくなります。

特に男性側から一方的に破棄された場合、女性の精神的、経済的負担が大きいためです。

この場合、慰謝料に加えて、養育費や出産費用の請求も検討すべきです。

まとめ

婚約破棄による慰謝料請求は、婚約の成立と相手側の不法行為が認められる場合に可能です。

不貞行為や暴力、正当な理由のない一方的な破棄などが慰謝料請求の根拠となります。

慰謝料の相場は理由や状況によって大きく異なりますが、30万円〜150万円程度が一般的です。

慰謝料請求を成功させるためには、婚約の成立と相手の不法行為を証明する証拠収集が重要です。

また、慰謝料とは別に「手切れ金」という概念もあり、これは法的義務ではなく道義的な支払いという性質を持ちます。

慰謝料は原則として非課税ですが、高額な場合や性質が不明確な場合は贈与税の対象となることもあるため注意が必要です。

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