裁判離婚とは?手続きの流れ・費用・注意点・離婚できる確率を解説

裁判離婚を検討している方の中には、「離婚調停がうまくいかなかった」「相手が離婚に応じてくれない」という悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
裁判離婚とは、調停が不成立となった後に裁判所に訴えを起こし、判決によって離婚を成立させる方法です。
相手が同意しなくても離婚が認められる可能性がありますが、民法で定められた離婚事由に該当することが必要となります。
この記事では、裁判離婚の基本的な仕組みから具体的な流れ、メリット・デメリットまで詳しく解説していきます。
裁判離婚は複雑な手続きが必要ですが、この記事を参考にすれば、見通しを立てながら進めることができます。
裁判離婚とは?判決によって離婚を成立させる方法
裁判離婚とは、離婚調停が不成立になった後に、家庭裁判所に訴訟を提起して離婚を成立させる方法です。
相手が離婚に同意しない場合でも、判決によって強制的に離婚が成立する可能性があります。
ただし、裁判離婚が認められるためには、民法770条で定められた離婚事由に該当する必要があります。
離婚事由 | 内容 |
---|---|
不貞行為 | 配偶者が第三者と性的関係を持った場合 |
悪意の遺棄 | 正当な理由なく同居・協力・扶助の義務を怠ること |
3年以上の生死不明 | 配偶者の生死が3年以上わからない状態 |
強度の精神病 | 配偶者が重い精神疾患にかかり、回復の見込みがない場合 |
その他婚姻を継続し難い重大な事由 | DV、アルコール依存症、ギャンブル依存症、多額の借金など |
裁判所は上記の離婚事由に基づいて事実確認を行い、離婚すべきかどうかを判断します。
当事者同士の話し合いである協議離婚や、調停委員を介した調停離婚と異なり、裁判離婚では判決により法的強制力をもって離婚が成立します。
裁判官が「離婚すべき」と判断した場合、その日をもって相手の同意がなくても離婚が成立するのが裁判離婚の特徴です。
裁判離婚と協議離婚・調停離婚・審判離婚の主な違い
裁判離婚と他の離婚方法の大きな違いは、離婚が成立するタイミングと相手の同意の必要性にあります。
それぞれの離婚方法には特徴があり、夫婦間の状況によって適した方法が異なります。
- 夫婦間での協議(協議離婚)
- 調停の申立て(調停離婚)
- 調停に代わる審判(審判離婚)
- 訴訟提起(裁判離婚)
- 控訴・上告
一般的に離婚は上記の順序で進められ、各段階で合意に至れば、そこで離婚が成立します。
離婚方法 | 特徴 | 必要な条件 |
---|---|---|
協議離婚 | 夫婦間の話し合いのみで成立 | 双方の合意 |
調停離婚 | 調停委員を介した話し合い | 調停での合意 |
審判離婚 | 家庭裁判所の審判による離婚 | 家庭裁判所の判断 |
裁判離婚 | 判決による強制的な離婚 | 法定の離婚事由 |
協議離婚は、夫婦で話し合いをして合意すれば離婚届を提出するだけで成立する最も簡単な方法です。
しかし、話し合いがまとまらない場合は調停離婚へと進みます。
調停離婚では、裁判所の調停委員が間に入って合意形成を手伝いますが、それでも合意できないときは審判離婚や裁判離婚へと進むことになります。
審判離婚は調停の中でわずかな条件が合意に至らない場合に、裁判官が審判を下すケースです。
裁判離婚は、これらすべての段階で合意に至らなかったときの最終手段となり、法律の定める離婚事由に基づいて判決が下されます。
裁判離婚で請求できる内容
裁判離婚では単に離婚を求めるだけでなく、財産分与や親権についても同時に請求することができます。
離婚裁判では主に以下の3つの内容について請求が可能です。
それぞれの請求内容によって必要な手続きや証拠が異なります。
裁判離婚を考える場合は、請求したい内容をあらかじめ整理しておくことが大切です。
離婚そのもの【民法で定められた5つの離婚事由が必要】
裁判離婚では、まず「離婚すること自体」を請求することができます。
しかし、ただ「性格が合わない」という理由だけでは認められません。
民法770条に規定されている5つの離婚事由のいずれかに該当する必要があります。
- 配偶者の不貞行為(浮気や不倫)
- 悪意の遺棄(正当な理由なく同居や扶助の義務を放棄)
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みがない強度の精神病
- その他婚姻を継続し難い重大な事由(DV、ギャンブル依存症、多額の借金など)
「その他婚姻を継続し難い重大な事由」には、DVだけでなく、過度な飲酒やギャンブル、セックスレスなども場合によっては含まれます。
ただし、これらの事由を主張するだけでなく、証拠を示して立証する必要があります。

財産分与など金銭に関する請求
裁判離婚では、夫婦間の金銭問題についても請求することができます。
主に以下の3つの内容について請求が可能です。
- 慰謝料の支払い
- 財産分与の内容
- 年金分割の割合
慰謝料については、離婚の原因となった不法行為(民法709条)に基づいて損害賠償として請求します。
例えば、不貞行為やDVなど相手の行為によって精神的苦痛を受けた場合、それに対する慰謝料を請求できます。
財産分与は、結婚生活中に夫婦で築いた財産を分ける手続きです。
預貯金、不動産、車などの資産だけでなく、借金についても分与の対象となることがあります。
年金分割は、婚姻期間中の厚生年金の保険料納付記録を分割するものです。
特に専業主婦だった方にとって重要な請求内容になります。

親権や面会交流など子どもに関する請求
子どもがいる夫婦の裁判離婚では、子どもに関する事項も重要な請求内容です。
主に以下の3つについて請求することができます。
- 親権者の指定
- 養育費の支払い
- 面会交流の取り決め
子どもが15歳以上の場合、裁判所は人事訴訟法32条4項に基づいて子どもの意見を聴取します。
子どもの年齢が低い場合でも、裁判所は何らかの方法で子どもの気持ちを把握しようとするのが一般的です。
親権や面会交流の決定は、あくまでも「子どもの最善の利益」を最優先に判断されます。
したがって、親の希望だけでなく、子どもの気持ちや生活環境も考慮されることを理解しておきましょう。
裁判離婚の流れとプロセス
裁判離婚は一定の手順に沿って進められます。
調停から判決に至るまでのプロセスを理解しておくことで、心の準備ができるでしょう。
裁判離婚は一般的に以下の6つのステップで進行します。
- 請求者(原告)が家庭裁判所に訴訟を提起する
- 裁判所が相手方(被告)に訴状を送達する
- 被告が答弁書を提出する
- 裁判所が口頭弁論期日を指定する
- 裁判官が争点や証拠を調べて判断する
- 判決
まず、調停が不成立となった後に離婚を求める側が訴状を作成し、裁判所に提出します。
訴状を受け取った裁判所は、その内容を相手方に送達します。
相手方は訴状に対する反論や主張を記載した答弁書を提出することになります。
口頭弁論では、双方が出席して主張を行い、裁判官が争点を整理します。
その後、必要に応じて証人尋問や本人尋問が行われ、証拠調べが進められます。
特に不貞行為やDVを理由とする場合は、写真や診断書などの具体的な証拠が重要になります。
すべての審理が終わると、裁判官は離婚を認めるかどうかの判決を下します。
判決に不服がある場合は、2週間以内に控訴することができます。
離婚裁判の期間は事案の複雑さによって大きく異なりますが、一般的には半年から数年かかることもあります。

裁判離婚に必要な書類と費用
裁判離婚を進めるためには、いくつかの重要な書類と費用が必要になります。
これらを事前に準備しておくことで、手続きをスムーズに進めることができます。
必要書類や費用の準備には時間がかかることもあるので、早めに用意しておきましょう。
離婚訴状の書き方と提出
離婚裁判の第一歩となるのが、離婚訴状の作成です。
訴状とは、裁判所に離婚を求める際に提出する正式な書類です。
訴状には以下の内容を記載する必要があります。
- 当事者(原告・被告)の氏名と住所
- 請求の趣旨(「被告と離婚する」など具体的な請求内容)
- 請求の原因(離婚を求める具体的な理由や経緯)
- 立証方法(証拠や証人の予定)
訴状は裁判所に提出するだけでなく、相手方にも送られるため、計2通必要である点に注意してください。
訴状のフォーマットや詳しい書き方は、裁判所のウェブサイトでダウンロードできます。
専門的な内容が多いため、弁護士に依頼することをおすすめします。
調停不成立の証明書
裁判離婚を進めるためには、調停不成立証明書が必要です。
これは、事前に調停を行ったが合意に至らなかったことを証明する書類です。
日本の離婚制度では「調停前置主義」が採用されており、原則として裁判離婚の前に調停を経なければなりません。
調停不成立証明書は、調停を行った家庭裁判所で取得できます。
発行には300円分の収入印紙が必要です。
調停が不成立になった日から期間が空きすぎると証明書の取得が難しくなることもあるので、なるべく早めに入手しておきましょう。
夫婦の戸籍謄本
裁判離婚には、夫婦それぞれの戸籍謄本も必要です。
戸籍謄本は夫婦関係を証明する公的書類として重要です。
一般的に、本籍地のある市区町村役場で取得することができます。
戸籍謄本1通につき450円程度の手数料がかかります。
有効期限はありませんが、最新の情報を反映したものを使用するため、裁判開始前の3ヶ月以内に取得したものを用意するとよいでしょう。
手続きの際に戸籍謄本が足りないと手続きが止まってしまうことがあるので、必要な通数を事前に確認しておくことをおすすめします。
裁判にかかる費用
裁判離婚には、いくつかの費用がかかります。
主な費用は以下の通りです。
費用項目 | 金額の目安 |
---|---|
訴状の印紙代 | 請求額に応じて異なる(離婚のみなら1万円程度) |
予納郵便切手代 | 数千円〜1万円程度 |
調停不成立証明書 | 300円 |
戸籍謄本 | 1通450円 |
弁護士費用 | 20万円〜50万円程度(事案により異なる) |
訴状に貼る収入印紙の金額は、訴訟の目的によって変わります。
単に離婚を求めるだけなら比較的安価ですが、財産分与や慰謝料なども請求する場合は高額になることがあります。
また、弁護士に依頼する場合は別途弁護士費用がかかります。
弁護士費用は事案の複雑さや地域によって異なりますが、初期費用と成功報酬を合わせて20万円〜50万円程度が一般的です。
裁判に勝てば相手に費用の負担を求めることもできますが、事前に十分な資金を準備しておくことが大切です。
裁判離婚前に知っておきたい2つの注意点
裁判離婚を検討する前に、知っておくべき重要な注意点があります。
これらを理解しておくことで、現実的な見通しを立てることができるでしょう。
裁判離婚は他の離婚方法と比べて時間と費用がかかるため、覚悟を持って臨む必要があります。
調停を経ないと裁判離婚は始められない
裁判離婚の重要な前提条件として、必ず調停を経なければならない点があります。
これは日本の離婚制度における「調停前置主義」と呼ばれる原則です。
どんなに相手との関係が悪化していても、いきなり裁判所に訴えを起こすことはできません。
まずは家庭裁判所で調停を申し立て、調停委員を介した話し合いの場を設ける必要があります。
調停で合意に至らなかった場合に発行される「調停不成立証明書」が、裁判離婚を始めるための必須書類となります。
この証明書がなければ、裁判所は離婚訴訟を受け付けてくれないので注意しましょう。
法律上、離婚は極力夫婦間の話し合いで解決すべきという考え方に基づいているため、裁判離婚はあくまでも最終手段と位置づけられています。
判決が出るまで時間がかかることが多い
裁判離婚のもう一つの重要な注意点は、判決が出るまでに長い時間がかかる可能性があることです。
裁判所の進行状況や争点の複雑さによっては、離婚訴訟が数年に及ぶケースも珍しくありません。
裁判は通常、1ヶ月に1回程度の頻度で開かれます。
事実関係の確認、証拠の提出、証人尋問など、様々な手続きが段階的に進められるため、自ずと時間がかかります。
特に、親権や財産分与などについても争いがある場合は、さらに長期化する傾向があります。
比較的シンプルな事案でも、判決までに半年以上かかるのが一般的です。
この間の精神的・経済的負担も考慮して、裁判離婚を選択するかどうか判断する必要があります。
裁判中も仕事や育児などの日常生活を送る必要があるため、長期戦になることを想定した生活設計が重要です。
裁判離婚の3つのメリット
裁判離婚には、他の離婚方法にはない独自のメリットがあります。
これらのメリットを理解することで、自分の状況に合った選択ができるでしょう。
裁判所が離婚の是非を判断してくれる
裁判離婚の最大のメリットは、離婚すべきかどうかを裁判所が第三者の立場から判断してくれる点です。
夫婦間で話し合いがまとまらない場合でも、法律に基づいた公平な判断が得られます。
感情的な対立がある場合でも、冷静かつ客観的な判断基準で離婚の可否が決まります。
特に相手が理不尽な要求をしてきたり、離婚に応じようとしない場合に有効です。
裁判所という公的機関の判断によって明確な決着がつくため、長引く離婚問題から解放される道が開けます。
「このままずっと離婚できないのでは」という不安から解放されるメリットは大きいでしょう。
証拠があれば有利に進めることができる
裁判離婚では、離婚事由を裏付ける証拠があれば有利に進めることができます。
例えば、不貞行為やDVの証拠を持っている場合、それが強力な武器になります。
具体的な証拠があれば、離婚が認められる可能性が高まるだけでなく、慰謝料請求も有利になります。
証拠として認められるものには、以下のようなものがあります。
- 不貞行為の写真や動画
- DVの診断書や写真
- 暴言などを録音した音声データ
- 借金や浪費を示す通帳の写しや領収書
- 第三者の証言
裁判では「証拠がすべて」と言われるほど、客観的な証拠の有無が重要になります。
自分に有利な証拠を適切に収集・保存しておくことが、裁判を有利に進めるカギとなります。

相手が同意しなくても離婚できる可能性がある
裁判離婚の大きなメリットとして、相手の同意がなくても離婚が成立する可能性がある点が挙げられます。
協議離婚や調停離婚では双方の合意が必要ですが、裁判離婚は判決によって強制力を持ちます。
裁判所が「離婚すべき」と判断すれば、相手が反対していても離婚が成立します。
これは、どんなに話し合いを重ねても離婚に応じない相手がいる場合の最終手段として重要です。
また、離婚だけでなく、慰謝料や財産分与、親権などについても裁判所の判断で決めることができます。
相手が離婚には同意しているものの、条件面で折り合いがつかない場合にも有効な解決策となります。
裁判離婚の3つのデメリット
裁判離婚にはメリットがある一方で、無視できないデメリットも存在します。
離婚を検討する際は、これらのデメリットもしっかり理解しておきましょう。
弁護士費用など経済的な負担が大きい
裁判離婚の大きなデメリットの一つは、経済的な負担が大きいことです。
裁判所に支払う費用だけでなく、弁護士費用も考慮する必要があります。
弁護士に依頼する場合、着手金と成功報酬を合わせて20万円から50万円程度の費用がかかるのが一般的です。
裁判所に納める費用としては、訴状の印紙代や予納郵便切手代などがあります。
訴訟の内容によっては、これらの費用が高額になる場合もあります。
特に財産分与や慰謝料の請求額が大きい場合は、印紙代も比例して高くなります。
経済的に余裕がない状態で裁判を始めると、生活が苦しくなる可能性があるため、事前に十分な資金計画を立てることが重要です。

判決までに長い時間がかかる
裁判離婚は他の離婚方法と比べて、解決までに時間がかかる点も大きなデメリットです。
シンプルな事案でも半年程度、複雑な事案では数年かかることもあります。
争点が多い場合や相手が非協力的な場合は、さらに長期化することも珍しくありません。
裁判の日程は通常1ヶ月に1回程度しか設定されず、双方の都合や裁判所の混雑状況によって間隔が広がることもあります。
また、証拠収集や書面の作成など、裁判の準備にも時間が必要です。
離婚問題を早期に解決したい場合は、裁判離婚が最適な選択肢とは言えないかもしれません。
この長期化するプロセスは、次に挙げる精神的負担とも密接に関連しています。

精神的な負担が大きい
裁判離婚では、精神的ストレスが長期間続くことも重要なデメリットです。
法廷で相手と対峙することは、多くの人にとって大きな心理的負担となります。
裁判では互いの主張をぶつけ合うため、感情的な対立が深まることもあります。
また、プライベートな事柄が公開の法廷で取り上げられることへの抵抗感も大きいでしょう。
特に子どもがいる場合は、親権や養育費などをめぐって感情的になりがちです。
裁判が長引けば長引くほど、この精神的負担は増大していきます。
判決内容に納得がいかない場合でも、一度出された判決は受け入れなければなりません。
控訴することも可能ですが、さらに時間と費用がかかることになります。
裁判離婚を選択する際は、こうした精神的な負担にも耐えられるかどうか考慮する必要があります。
離婚裁判で負けやすい理由と対策
離婚裁判はただ訴えを起こせば必ず認められるというものではありません。
裁判で離婚が認められないケースも少なくありません。
ここでは、離婚裁判で負ける主な理由と、その対策について解説します。
これらの原因を理解し適切に対策を講じることで、裁判離婚の成功率を高めることができます。
法律で定められた離婚事由が認められない
裁判離婚で最も多い敗訴理由は、民法770条に定められた離婚事由に該当しないと判断されるケースです。
「性格の不一致」や「価値観の相違」だけでは、基本的に離婚は認められません。
裁判で離婚が認められるためには、不貞行為やDVなど法律で定められた明確な事由が必要です。
対策としては、自分のケースが民法770条のどの事由に該当するのかを明確にしておくことが重要です。
特に「その他婚姻を継続し難い重大な事由」は幅広い解釈が可能ですが、単なる不満や小さなトラブルではなく、婚姻関係を続けられないほどの深刻な問題であることを示す必要があります。
弁護士と相談して、自分のケースがどの離婚事由に該当するか、また裁判でどのように主張すべきかを検討しましょう。
離婚事由を証明する証拠が足りない
離婚事由に該当する場合でも、それを裏付ける証拠がなければ裁判で認められない可能性が高くなります。
例えば、配偶者の不貞行為を主張しても、それを示す具体的な証拠がなければ認められません。
裁判では「言った・言わない」の水掛け論では決着がつかず、客観的な証拠が重要になります。
対策としては、以下のような証拠を日頃から収集・保存しておくことが大切です。
- DVの場合:診断書、怪我の写真、警察への相談記録
- 不貞行為の場合:写真や動画、LINEなどのメッセージ、第三者の証言
- 悪意の遺棄の場合:別居の経緯を示す手紙やメール
- 浪費や借金の場合:通帳の写し、クレジットカードの明細
証拠収集の際は違法な手段(無断での録音や盗撮など)を用いないよう注意してください。
違法に収集された証拠は裁判で採用されず、逆に訴えられる可能性もあります。
婚姻関係の破綻が認められない
裁判所は「婚姻関係が完全に破綻している」と判断できる場合に離婚を認める傾向があります。
例えば、別居期間が短い場合や、日常的なコミュニケーションが続いている場合は、破綻していないと判断されることがあります。
裁判では、修復の余地がないほど婚姻関係が壊れていることを示す必要があります。
対策としては、婚姻関係が破綻している客観的な事実を示すことが重要です。
- 長期間の別居(一般的に3年以上が目安)
- コミュニケーションの完全な断絶
- 夫婦としての共同生活の実態がない
- 複数回の離婚協議が不調に終わった経緯
別居をしている場合は、別居の開始時期や経緯を示す証拠(引越し業者の領収書、新居の賃貸契約書など)を保存しておくと良いでしょう。
有責配偶者からの離婚請求である
離婚の原因を作った本人(有責配偶者)が離婚を請求するケースは、原則として認められていません。
例えば、不倫をした側から離婚を求める場合や、DVを行った側からの離婚請求などです。
「有責配偶者からの離婚請求」は、基本的に権利の濫用とみなされ認められにくいのが実情です。
ただし、以下のような例外的なケースでは認められる可能性があります。
- 長期間(5年以上)の別居がある
- 相手も離婚に同意している
- 未成年の子がいない、または成長している
- 離婚後の相手の生活が経済的に保障されている
対策としては、可能な限り長期間の別居を経た上で、相手の生活保障(慰謝料や財産分与)について十分な提案をすることが重要です。
また、和解による離婚も選択肢の一つとなります。
裁判の途中でも、双方が合意すれば和解により離婚が成立することがあります。
よくある質問
裁判離婚について読者からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
具体的な疑問点を解消し、裁判離婚の理解を深める参考にしてください。
離婚裁判は途中でやめることはできますか?
はい、判決確定前であれば訴えの取下げが可能です。ただし、被告が既に答弁書を提出していたり、口頭弁論に出席したりしている場合は、取下げには被告の同意が必要となります。
裁判離婚ではどのくらいの確率で離婚できますか?
最高裁判所の統計によると、近年の裁判離婚では約37%が判決によって離婚成立、約36%が和解による離婚成立となっています。証拠の有無や離婚事由の明確さによって確率は大きく変わります。
相手が裁判に来ない場合はどうなりますか?
初回の口頭弁論で答弁書を提出していれば、欠席しても答弁書の内容が陳述されたものとして扱われます。しかし、答弁書を提出せずに欠席した場合は、請求内容が認められやすくなります。
裁判離婚の費用はいくらくらいかかりますか?
裁判所に納める印紙代や郵便切手代で1万円前後、弁護士に依頼する場合は着手金と成功報酬を合わせて20万円〜50万円程度が一般的です。事案の複雑さによって費用は変動します。
裁判離婚はどのくらいの期間がかかりますか?
シンプルな事案で半年程度、争点が多い複雑な事案では1〜3年かかることもあります。裁判所の混雑状況や当事者の協力度合いによって期間は大きく変わります。
DVやモラハラは裁判離婚の理由になりますか?
はい、DVやモラハラは民法770条の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当します。ただし、診断書や写真、第三者の証言など客観的な証拠が必要です。証拠がないと認められない可能性があります。
裁判離婚には別居期間はどれくらい必要ですか?
法律上の明確な基準はありませんが、婚姻関係の破綻を示す証拠として、一般的には3年以上の別居があると有利になることが多いです。特に有責配偶者からの離婚請求では5年以上が目安とされています。
裁判中に和解することはできますか?
はい、裁判途中でも当事者間で合意すれば和解による離婚が可能です。実際に裁判離婚の約36%は和解で決着しています。裁判官からも和解案が提示されることがあります。
離婚判決後の手続きを教えてください。
判決確定後10日以内に、確定証明書を取得して離婚届と一緒に本籍地の市区町村役場に提出します。判決文と戸籍謄本も必要です。これにより戸籍に離婚の記載がされ、法的に離婚が完了します。
まとめ
裁判離婚は、調停が不成立になった場合の最終手段として重要な選択肢です。
相手が同意しなくても裁判所の判断で離婚が成立する可能性があるというメリットがある一方で、時間や費用、精神的負担といったデメリットもあります。
裁判離婚を成功させるためには、民法770条に定められた離婚事由に該当することと、それを証明する証拠が不可欠です。
特に重要なのは、婚姻関係が破綻していることを客観的に示すことができるかどうかです。
離婚訴訟は専門的な知識が必要なため、弁護士に相談しながら進めることをおすすめします。
裁判離婚は決して簡単な道ではありませんが、しっかりと準備をして臨めば、新しい人生への扉を開くことができるでしょう。