離婚時に年金分割しないとどうなる?損をするケース、離婚後の申請方法

離婚する際に年金分割について知らないまま手続きを進めてしまうと、後々大きな損失を被る可能性があります。
特に専業主婦だった方や収入差が大きかったカップルの場合、年金分割をしないと将来受け取れる年金額に大きな差が生じてしまうのです。
「年金分割しないとどうなる」と不安に思っている方も多いのではないでしょうか。
実は年金分割には申請期限があり、離婚後に気づいても手遅れになることもあります。
当記事では離婚時の年金分割について、しなかった場合のリスクや後から手続きする方法まで詳しく解説していきます。
専門的な知識がなくても理解できるよう、具体例を交えながら分かりやすく説明していきますので、将来の年金について不安を感じている方はぜひ最後までお読みください。
離婚時の年金分割制度とは?
離婚時の年金分割制度は、夫婦の一方が厚生年金に加入していた期間の保険料納付実績を、離婚後に分け合うことができる仕組みです。
この制度が導入された背景には、専業主婦(夫)や収入差の大きい夫婦間での将来の年金格差を是正する目的があります。
例えば、結婚期間中に妻が専業主婦で夫だけが厚生年金に加入していた場合、離婚すると妻の将来もらえる年金額が極端に少なくなってしまいます。
年金分割をしないと、離婚後の生活を支える重要な収入源が確保できず、老後の生活設計に大きな支障をきたす恐れがあります。
年金分割には「合意分割」と「3号分割」という2種類の方法があり、それぞれ手続きの流れや対象となる期間が異なります。
分割の種類 | 対象期間 | 必要な手続き |
---|---|---|
合意分割 | 婚姻期間中のすべて | 当事者の合意または裁判所の決定 |
3号分割 | 2008年4月以降の第3号被保険者期間 | 請求のみで自動的に分割 |
合意分割の場合は、離婚から2年以内に年金事務所で手続きをする必要があるため、うっかり忘れてしまうと権利が消滅してしまうことに注意が必要です。
一方、3号分割は2008年4月以降に第3号被保険者(専業主婦など)だった期間が対象となり、請求すれば自動的に2分の1ずつ分割されます。
どちらの方法を選ぶにしても、年金分割しないとどうなるのかを理解した上で、自分にとって最適な選択をすることが大切です。

離婚時に年金分割を忘れると損をするケースがある
離婚する際に年金分割の手続きを忘れてしまうと、将来受け取れる年金額が大幅に少なくなる可能性があります。
特に結婚期間中に専業主婦(夫)だった方や、パートタイムで働いていた方は影響が大きいでしょう。
例えば、20年間の結婚生活で夫が会社員として厚生年金に加入し、妻が専業主婦だった場合を考えてみましょう。
年金分割をしないまま離婚すると、夫は満額の厚生年金を受け取れますが、妻は国民年金の基礎年金のみとなり、毎月の受給額に大きな差が生じます。
厚生年金と国民年金の月額受給額の差は、平均で5万円以上になることもあり、生涯で考えると1,000万円を超える差になる場合もあります。
特に以下のようなケースでは、年金分割をしないと大きな損失につながる可能性が高いです。
損失が大きいケース | 理由 |
---|---|
結婚期間が長い場合 | 分割対象となる期間が長いため、影響が大きい |
収入差が大きい夫婦 | 高収入者の年金記録の価値が高いため |
専業主婦(夫)だった期間が長い | 自分の厚生年金記録がほとんどないため |
再婚の予定がない場合 | 配偶者の年金を頼れなくなるため |
また、年金分割には期限があるため、うっかり忘れて手続きが遅れると、権利を失ってしまう恐れもあります。
合意分割の場合、離婚後2年以内に手続きを完了させる必要があり、この期限を過ぎると原則として年金分割の請求ができなくなります。
年金分割しないとどうなるのかを考えると、老後の生活設計に大きな影響を与える可能性が高いため、必ず検討すべき重要な手続きだと言えるでしょう。

離婚時に年金分割が不要な場合はある?
離婚時に年金分割が必ずしも必要でないケースもあります。
状況によっては手続きをしなくても問題ない場合があるので確認してみましょう。
ただし、これらのケースでも将来の年金受給に影響する可能性があるため、専門家に相談することをおすすめします。
配偶者が厚生年金をかけていない場合
配偶者が国民年金のみに加入していて厚生年金に加入していない場合は、年金分割の対象となる記録が存在しません。
例えば、夫婦ともに自営業者で国民年金だけに加入していた場合、分割する厚生年金がないため手続きは不要です。
国民年金は個人単位で加入、納付するものなので、離婚しても相手の年金記録に影響を与えることはありません。
年金分割の対象になるのは厚生年金の保険料納付記録のみで、国民年金の基礎年金部分は分割の対象外です。
そのため、夫婦の双方が国民年金のみの加入者であれば、離婚時に年金分割の手続きをする必要はないのです。
自分の年金加入実績が10年に満たない場合
年金を受け取るためには、原則として10年以上の年金加入期間が必要です。
自分の年金加入期間が短く、年金分割をしても将来の受給資格を得られない場合は、分割手続きの意味が薄れる可能性があります。
特に海外に長く住んでいた方や、若い年齢での離婚で加入期間が短い場合などが該当するかもしれません。
ただし、年金分割を受けることで加入期間が10年を超える可能性がある場合は、将来の年金受給権を得るためにも手続きを検討すべきです。
また、将来的に再就職や追納などで10年の資格期間を満たす可能性がある場合は、年金分割をしておくメリットがあります。
年金分割をしないことに夫婦間で合意している場合
離婚協議の中で、年金分割をしないことに夫婦間で明確に合意している場合は、手続きを行わないという選択肢もあります。
例えば、別の財産で十分な補償を受けることで年金分割の権利を放棄するような取り決めをする場合もあるでしょう。
住宅や預貯金などの財産分与で十分な資産を得られる場合、あえて年金分割を求めないというケースも考えられます。
ただし、将来の年金受給に大きく影響する可能性があるため、安易に権利放棄をせず、専門家に相談した上で判断することが重要です。
特に専業主婦(夫)だった期間が長い場合は、年金分割しないとどうなるのかをしっかり理解してから決断するべきでしょう。
年金分割をしないという合意をする場合は、公正証書などの文書で残しておくと将来のトラブル防止になります。

離婚時に年金分割をしない合意によるリスク
年金分割をしないという合意をする場合、将来的に後悔する可能性もあります。
どのようなリスクがあるのか確認しておきましょう。
取決めの内容次第では合意分割ができなくなるおそれがある
離婚時に「年金分割をしない」と合意した場合、後から考えが変わっても合意分割ができなくなる可能性があります。
特に離婚協議書や公正証書で明確に「年金分割を請求しない」と記載していると、後から覆すのは難しいでしょう。
例えば、住宅や預貯金などの財産分与で妥協した代わりに年金分割の権利を放棄するという取り決めをした場合が該当します。
後から「年金分割しないとどうなる」と調べて後悔しても、一度交わした合意内容を覆すのは困難です。
離婚時には感情的になりがちですが、冷静に将来の経済状況を見据えて判断することが大切です。
特に専業主婦(夫)だった期間が長い場合は、年金分割の権利を安易に放棄しないよう注意しましょう。
年金分割の交渉に応じてもらえない可能性もある
離婚時に年金分割について話し合わなかった場合、後から元配偶者に連絡を取って交渉することになります。
しかし、すでに離婚が成立している状態では、元配偶者が交渉に応じてくれるとは限りません。
特に不仲で離婚した場合や、元配偶者と連絡が取れなくなった場合は、年金分割の手続きが難しくなるでしょう。
元配偶者が協力的でない場合、家庭裁判所の調停や審判などの法的手続きが必要になり、時間と労力がかかります。
また、離婚後に元配偶者が再婚したり、転居したりして連絡が取れなくなるケースも少なくありません。
そのため、年金分割は離婚手続きと同時に進めることが望ましいと言えるでしょう。
年金分割の申請期限を過ぎてしまう場合がある
年金分割には申請期限があり、それを過ぎると原則として請求できなくなります。
合意分割の場合、離婚成立日から2年以内に年金事務所での手続きを完了させなければなりません。
「離婚後にゆっくり考えよう」と先延ばしにしていると、気づいたときには期限が過ぎていたということもあり得ます。
2年という期限を過ぎると、たとえ元配偶者が同意しても年金分割ができなくなり、将来の年金額に大きな影響を与えます。
特に離婚直後は住居や仕事の問題など他にも対応すべきことが多く、年金分割の手続きを忘れがちです。
離婚が決まったら、年金分割も含めて必要な手続きをリストアップし、計画的に進めることが重要です。
年金分割しないとどうなるかを把握した上で、将来の生活設計に支障が出ないよう、適切に判断しましょう。
年金分割せずに離婚してしまった場合の対処法
年金分割をせずに離婚手続きを完了してしまっても、まだ対処法があります。
手遅れになる前に適切な手順で進めましょう。
①年金分割のための情報通知書を入手する
まず最初に、年金分割に必要な情報を集める必要があります。
年金事務所または年金相談センターで「年金分割のための情報通知書」を請求しましょう。
この通知書には、分割対象となる厚生年金の標準報酬月額などの情報が記載されています。
情報通知書は離婚前でも請求可能ですが、離婚後に請求する場合は戸籍謄本の提出が必要になります。
請求の際には、本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)を持参してください。
また、元配偶者の基礎年金番号がわかると手続きがスムーズに進みます。
②協議または調停・審判で取り決める
情報通知書を入手したら、次は年金分割の割合について元配偶者と協議します。
合意分割の場合、分割割合は当事者間の話し合いで決めることができます(上限は2分の1)。
元配偶者と話し合いがうまくいかない場合は、家庭裁判所での調停や審判という方法もあります。
離婚から2年以内であれば、合意分割の手続きが可能ですが、それを過ぎると原則として請求できません。
ただし、3号分割については請求期限がないため、2008年4月以降の第3号被保険者期間がある場合は手続き可能です。
協議が成立したら、「年金分割のための合意書」を作成しておくと良いでしょう。

③年金事務所で必要な手続きを行う
最後に、年金事務所で分割手続きを完了させます。
合意分割の場合は「厚生年金保険 標準報酬改定請求書」、3号分割の場合は「国民年金第3号被保険者期間についての厚生年金保険標準報酬改定請求書」を提出します。
必要書類としては、離婚したことを証明する戸籍謄本や分割割合を示す合意書または審判書などがあります。
年金分割しないとどうなるかを考えると、特に専業主婦(夫)だった方は、期限内に必ず手続きを完了させることが重要です。
手続きが完了すると年金記録が書き換えられ、将来の年金額に反映されます。
なお、年金分割後に再婚しても、すでに分割された年金記録は変更されません。
手続きに不安がある場合は、年金事務所の窓口で相談したり、弁護士などの専門家に相談したりすることをおすすめします。

よくある質問
離婚時の年金分割について、読者からよく寄せられる質問にお答えします。
離婚の際に年金分割しないとどうなるのかという観点から、具体的なケースごとに解説します。
- 離婚時の年金分割で損をするケースはありますか?
- 年金分割について知らなかった場合はどうなりますか?
- 夫が年金分割を拒否している時はどうすればいいですか?
- 共働きでも年金分割の手続きは必要ですか?
- 年金分割後に再婚したらどうなるのか教えてください。
- 年金分割で自分の年金がいくら減るのか教えてください。
- 離婚から2年以上経過した場合の年金分割について教えてください。
- 3号分割と合意分割の違いとメリット・デメリットを教えてください。
まとめ
離婚時に年金分割しないとどうなるのかについて詳しく解説してきました。
年金分割を行わないと、特に専業主婦(夫)だった方や収入差が大きい夫婦の場合、将来の年金受給額に大きな差が出てしまう可能性があります。
年金分割が不要なケースもありますが、自分の状況をよく確認した上で判断することが大切です。
万が一、年金分割せずに離婚してしまった場合でも、離婚から2年以内であれば手続きが可能です。
老後の生活設計に大きく影響する問題ですので、不安がある場合は早めに年金事務所や専門家に相談することをおすすめします。
離婚という人生の大きな転機において、年金分割という重要な権利を見過ごさないようにしましょう。