離婚慰謝料は払わないとどうなる?差し押さえ?払えない時の対処法

離婚慰謝料を支払わないとどうなるのか、心配している方も多いのではないでしょうか。
特に相手から慰謝料の請求を受けたものの「支払う義務があるのか分からない」「そもそも払えない」という状況で悩んでいる方には切実な問題です。
離婚慰謝料を払わないと、最悪のケースでは強制執行されて財産を差し押さえられることもあります。
とはいえ、全ての場合に慰謝料を支払う義務があるわけではありません。
この記事では、離婚慰謝料を払わないとどうなるのか、実際に支払い義務がある場合とない場合について詳しく解説していきます。
離婚慰謝料についての正しい知識を身につけることで、不安なく適切な対応ができるようになります。
あなたの状況に合わせた解決策を見つけるために、ぜひ最後までお読みください。
離婚慰謝料とは?
離婚慰謝料とは、離婚の原因をつくった配偶者に対して、精神的な苦痛を受けた側が請求できる金銭的な賠償のことです。
不倫や暴力、暴言などによって婚姻関係が破綻した場合に、被害を受けた側が加害者に請求できる権利があります。
例えば、夫が不倫をして離婚することになった場合、妻は夫やその不倫相手に対して慰謝料を求めることができるのです。
逆に、婚姻関係が自然消滅的に終わったケースや、双方の性格の不一致による場合は、慰謝料が発生しないこともあります。
離婚慰謝料の相場は原因や状況によって大きく異なりますが、おおむね50万円から300万円程度といわれています。
最終的な金額は当事者同士の話し合いや裁判所の判断によって決まるため、ケースバイケースです。
離婚原因 | 慰謝料の相場 |
---|---|
不倫・浮気 | 100〜300万円 |
暴力・DV | 200〜500万円 |
性格の不一致 | 0〜50万円 |
生活費の不払い | 50〜100万円 |
ただし、離婚慰謝料を請求されたからといって、必ずしも支払わなければならないわけではありません。
支払い義務があるかどうかの判断や、支払わなかった場合のリスクについて理解しておくことが重要です。

【支払う約束なし】離婚慰謝料を払わないと生じる3つのデメリット
離婚慰謝料の支払いを約束していない場合でも、請求を無視したり拒否したりするとさまざまなデメリットが生じます。
ここからは、離婚慰謝料を払わないと起こりうる具体的なデメリットについて解説します。
裁判に移行する可能性が高まる
離婚慰謝料の支払いを拒否し続けると、相手は法的手段に訴えるケースが増えます。
最初は話し合いや調停で解決しようとしても、支払いを拒否し続けると相手の忍耐は尽きてしまいます。
その結果、調停から裁判へと進み、より厳しい状況に追い込まれる可能性が高まります。
裁判になると、弁護士費用や裁判所への出頭など、時間的・金銭的な負担が増大します。
また、裁判では客観的な証拠に基づいて判断されるため、有責性が明らかな場合は慰謝料の支払いを命じられるでしょう。
さらに、裁判所の判決に従わない場合は、強制執行の手続きにより財産が差し押さえられるリスクもあります。

示談交渉や裁判で不利な要素になる可能性がある
離婚慰謝料の支払いを拒み続けることは、相手との交渉や裁判の場で不利に働くことがあります。
誠意をもって対応していないと判断され、裁判官から悪い印象を持たれる可能性があるのです。
例えば、正当な理由なく支払いを拒んでいると、「誠実さに欠ける」と評価され、判決内容に影響することも。
また、裁判で負けた場合、慰謝料に加えて裁判費用や遅延損害金なども請求される可能性があります。
遅延損害金は年率3%(法定利率)で計算されるため、支払いが遅れるほど負担は増えていきます。
このような状況を避けるためにも、支払い義務があると判断される場合は早めに誠実な対応を心がけましょう。

慰謝料の請求者の怒りが膨らむ可能性がある
離婚慰謝料の支払いを拒否することで、相手の感情的な反発を招くケースが少なくありません。
特に不倫やDVなど深い精神的苦痛を与えた場合、支払いを拒むことで相手の怒りや恨みが増幅します。
感情的に対立が深まると、本来なら話し合いで解決できた問題が泥沼化するリスクが高まります。
例えば、子どもとの面会交流について協力が得られなくなったり、他の財産分与で譲歩してもらえなくなったりする可能性があります。
また、SNSでの誹謗中傷や職場への連絡など、予期せぬ形で報復される事例も見られます。
離婚後も良好な関係を保ちたい場合や、子どもがいる場合は特に、感情的な対立を避けるためにも誠実な対応が重要です。
デメリット | 具体的なリスク |
---|---|
裁判への移行 | 弁護士費用の発生、裁判所への出頭義務、強制執行の可能性 |
交渉・裁判での不利 | 誠実さを欠くと評価される、遅延損害金の発生、総支払額の増加 |
感情的対立 | 面会交流への悪影響、財産分与での不利益、予期せぬ報復行為 |
【支払う約束なし】離婚慰謝料を請求された場合に確認すべき2つのポイント
離婚慰謝料を請求されても、必ずしも支払う義務があるとは限りません。
ここでは、慰謝料を請求された際に確認すべき重要なポイントについて解説します。
離婚慰謝料を支払う義務があるかどうか
離婚慰謝料は、婚姻関係の破綻に「責任」のある側が支払うものです。
そのため、離婚の原因を作った側に該当しなければ、慰謝料を支払う義務はありません。
慰謝料支払いの義務があるかどうかは、離婚の原因と自分の責任の有無によって判断します。
例えば、単なる性格の不一致による離婚では、どちらにも特段の責任がないため慰謝料は発生しないのが一般的です。
ここからは、慰謝料を支払う義務がないケースについて詳しく見ていきましょう。
夫婦双方に離婚の原因がない場合
性格の不一致や価値観の相違など、お互いに明確な非がない理由で離婚する場合は、慰謝料の支払い義務はありません。
このようなケースでは双方に責任があるとはいえず、法律上の不法行為は成立しないためです。
たとえば、子育てへの考え方の違いや将来設計の食い違いなどで自然に冷めていった関係性の場合が当てはまります。
また、趣味や生活習慣の不一致など、どちらも悪意なく生じた状況での離婚も同様です。
このような場合、慰謝料請求をされても「支払い義務はない」と主張することができます。

不倫前にすでに婚姻関係が破綻していた場合
不倫があったとしても、その前に実質的な婚姻関係がすでに破綻していた場合は、慰謝料が発生しないことがあります。
これは「婚姻関係の破綻」と「不倫」との間に因果関係がないためです。
例えば、長期間の別居状態や夫婦間での会話・性生活の欠如が続いていた証拠があれば、婚姻関係の破綻を主張できます。
ただし、「婚姻関係が破綻していた」という主張は、客観的な証拠が必要です。
具体的には、別居の期間や経緯を示す証拠、夫婦間のやり取りを記録したメールやLINEなどが重要になります。
このようなケースでは、弁護士に相談して証拠を整理することをおすすめします。
時効が成立していないか確認する
離婚慰謝料には時効があるため、請求権が時効によって消滅している可能性も確認すべきポイントです。
離婚慰謝料の請求権は、損害および加害者を知った時から3年で時効が成立します。
また、不法行為の時から20年経過した場合も時効となります。
例えば、配偶者の不倫を知ってから3年以上経過した後に慰謝料を請求された場合は、時効を主張できる可能性があります。
ただし、時効の起算点については解釈が分かれることもあるため、専門家に相談することをおすすめします。
また、時効を主張するためには「時効の援用」という意思表示が必要です。
自動的に時効が適用されるわけではないので、この点も弁護士などの専門家に相談するとよいでしょう。
確認ポイント | 判断基準 | 必要な証拠・資料 |
---|---|---|
支払い義務の有無 | 離婚原因と責任の所在 | 夫婦間のやり取り記録、別居期間の証明など |
時効の成立 | 損害、加害者を知ってから3年 不法行為から20年 | 不倫発覚日の証拠、慰謝料請求日の記録など |
【支払う約束なし】離婚慰謝料を請求された場合の対応法
離婚慰謝料を請求されたとき、支払う約束をしていない場合には、いくつかの対応方法があります。
状況に応じた適切な対応をすることで、問題を円満に解決できる可能性が高まります。
支払い義務がないことを交渉する
自分に支払い義務がないと判断できる場合は、相手にその旨を伝えて交渉することも選択肢の一つです。
支払い義務がないと主張する場合は、感情的な対立を避けながら、客観的な事実や根拠に基づいて説明することが重要です。
例えば、性格の不一致による離婚であれば「お互いに非がある状況での離婚であり、慰謝料は発生しない」と伝えます。
また、婚姻関係がすでに破綻していた事実があれば、それを示す証拠も併せて提示するとよいでしょう。
ただし、一方的に拒否するだけでは相手の理解を得られないことが多いため、誠意を持った説明が必要です。
相手が納得しない場合は、冷静に話し合いを続けるか、弁護士などの専門家に間に入ってもらうことも検討しましょう。
弁護士を通じて交渉することで、感情的な対立を避けつつ、法的な観点から支払い義務がないことを伝えられます。

支払い義務を認めて減額や分割を交渉する
自分に支払い義務があると判断される場合でも、経済状況などによっては減額や分割払いを交渉する方法があります。
相手の請求額が一般的な相場よりも高い場合や、一括での支払いが難しい場合は、誠意をもって話し合いの場を設けましょう。
支払い義務を認めた上で条件交渉をする姿勢を見せることで、相手も柔軟な対応をしてくれる可能性が高まります。
分割払いの交渉を行う
経済的な理由から一括払いが難しい場合は、分割払いの提案が有効です。
具体的な金額と支払い計画を提示することで、相手に誠意を示すことができます。
例えば「毎月5万円ずつ、全額の支払いが完了するまで継続する」といった具体的な提案をしましょう。
また、分割払いの場合は必ず示談書を作成し、双方で合意した内容を文書化しておくことが重要です。
これにより、後のトラブルを防止することができます。
減額交渉を行う
慰謝料の金額が高すぎると感じる場合は、減額交渉を行うことも可能です。
減額交渉では、自分の経済状況や相場観を考慮した上で、現実的な金額を提案しましょう。
ただし、理由なく大幅な減額を求めると相手の不信感を招きますので注意が必要です。
例えば、収入や資産状況、子どもの養育費など他の経済的負担を考慮した上で「〇〇万円なら支払い可能」と具体的な金額を提示します。
この際、一括払いを条件に減額を求めるといった交渉の仕方も効果的です。
相手も早期解決を望んでいる場合は、このような提案に応じてくれることもあります。
対応方法 | ポイント | メリット |
---|---|---|
支払い義務なしの交渉 | 客観的な事実や根拠を示す 感情的にならない | 支払いを免れる可能性 法的根拠に基づく解決 |
分割払いの交渉 | 具体的な支払い計画を提示 示談書の作成 | 一時的な経済負担の軽減 計画的な支払いが可能 |
減額交渉 | 現実的な金額の提案 一括払いとのセット提案 | 総額の軽減 早期解決の可能性 |
【支払う約束あり】離婚慰謝料の払わなかったこので生じるリスク
すでに支払いを約束した離婚慰謝料を払わないと、支払い約束なしの場合と比べてより深刻なリスクが生じます。
ここでは、支払いを約束した後に慰謝料を払わなかった場合に発生する具体的なリスクについて解説します。
口約束や示談書などで支払いを約束した場合
口約束や私的な示談書で離婚慰謝料の支払いを約束したものの、実際に払わなかった場合のリスクについて見ていきましょう。
口約束や示談書で合意した慰謝料を支払わないと、相手は債務不履行として裁判で訴えることができます。
示談書に署名・捺印していれば、それは法的な証拠となり、支払い義務を否定することは難しくなります。
裁判で敗訴すれば、合意した慰謝料に加えて、遅延損害金や裁判費用も支払うことになるでしょう。
さらに、訴訟となれば個人の信用情報にも影響する可能性があり、将来的な借入などにも支障をきたす恐れがあります。
また、約束を破ることで相手との関係が悪化し、子どもとの面会交流などにも悪影響が出ることもあります。
公正証書で支払いを約束した場合
公正証書で離婚慰謝料の支払いを約束した場合、これを守らないとより深刻な事態になります。
公正証書には「強制執行認諾文言」が入っていることが多く、この場合は裁判なしで強制執行が可能になります。
つまり、支払いを怠ると、相手は裁判所に強制執行を申し立てることができるのです。
強制執行が認められると、給与や預金口座の差し押さえ、不動産などの資産の差し押さえといった厳しい措置が取られます。
給与の差し押さえは、手取り収入の最大4分の1までが対象となり、生活に大きな支障をきたす可能性があります。
また、差し押さえは勤務先に通知されるため、職場に事情が知られてしまう点も大きなデメリットです。

調停や裁判で支払いが決定した場合
調停や裁判で慰謝料の支払いが正式に決定したにもかかわらず、これを履行しない場合は最も深刻なリスクが生じます。
調停調書や判決は、それ自体が債務名義となり、強制執行の対象になります。
このような公的な決定に従わないことは、裁判所の命令に背くことを意味し、社会的な信用を大きく損なう行為です。
さらに、支払わなければ預貯金や給与の差し押さえだけでなく、場合によっては刑事罰の対象となることもあります。
特に悪質なケースでは「債権者を害する罪」として刑事告訴される可能性も否定できません。
また、裁判所の決定を無視し続けると、将来的に他の裁判案件でも不利になることがあります。
支払いの約束タイプ | 払わなかった場合のリスク | 強制執行の可能性 |
---|---|---|
口約束・示談書 | 債務不履行として裁判 遅延損害金、裁判費用の追加 | 直接は不可 裁判後に可能 |
公正証書 | 強制執行による差し押さえ 職場への通知 | 裁判なしで可能 |
調停・裁判 | 強制執行 社会的信用の喪失 刑事罰の可能性 | 即時可能 |
【支払う約束あり】離婚慰謝料を支払えない時の2つの対処法
すでに離婚慰謝料の支払いを約束したものの、経済的な理由などで支払えない場合の対処法について解説します。
このような状況では、放置せずに誠実に対応することが問題を悪化させないためのカギとなります。
分割払いの交渉を行う
離婚慰謝料を一括で支払えない場合、最初に検討すべきは分割払いの交渉です。
誠意をもって相手に現状を説明し、具体的な分割払いの計画を提案することが重要です。
交渉の際は、現在の収入や支出の状況を明らかにして、自分が支払える現実的な金額を提示しましょう。
例えば「毎月3万円ずつ、〇年間で完済する」といった具体的な提案が効果的です。
分割払いの合意が得られたら、必ず書面で約束内容を残すことをおすすめします。
合意書や公正証書を作成することで、後々のトラブルを防止できます。
なお、分割払いに応じてもらう代わりに、利息を支払うことを提案するケースもあります。
相手の立場になって考えれば、一括払いより分割払いの方が不利益なため、その埋め合わせとして検討する価値はあるでしょう。
自己破産を検討する
どうしても離婚慰謝料の支払いが不可能で、他にも返済できない借金がある場合は、自己破産を検討する選択肢もあります。
自己破産すると、離婚慰謝料を含むほとんどの債務が免除されますが、様々なデメリットも伴います。
まず、自己破産をすると一定期間は新たなローンやクレジットカードの作成ができなくなります。
また、職業制限があり、弁護士や税理士など一部の資格が必要な職業に就けなくなる場合もあります。
さらに、自宅などの資産も処分の対象となる可能性があるため、慎重に検討する必要があります。
なお、自己破産の前に個人再生などの他の債務整理方法も検討する価値があります。
個人再生であれば、債務を大幅に減額しつつも、自宅などの財産を手元に残せる可能性があります。
いずれにせよ、債務整理を検討する場合は、必ず弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
対処法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
分割払いの交渉 | ・一括払いの負担を軽減できる ・誠意を示すことで関係改善の可能性 | ・長期間の支払い義務が続く ・利息を要求される可能性 |
自己破産 | ・離婚慰謝料を含む債務が免除される ・経済的に再スタートできる | ・信用情報に記録が残る ・資産の処分が必要 ・職業制限がある |
よくある質問
離婚慰謝料を払わないとどうなるのかについて、読者からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
- 離婚慰謝料を払わなくていい場合はありますか?
- 離婚慰謝料の相場はどのくらいですか?
- 離婚慰謝料を払えない場合のリスクを教えてください。
- 裁判で決まった慰謝料を払わないとどうなりますか?
- 離婚慰謝料の時効はいつ成立しますか?
- 離婚慰謝料の減額交渉はどのように行えばよいですか?
- 不倫をした場合の慰謝料は必ず払わないといけないのですか?
- 慰謝料を払えない場合、親に支払い義務は発生しますか?
- 離婚慰謝料の免除を求める方法はありますか?
- 慰謝料が払えない時に弁護士に相談するメリットを教えてください。
まとめ
離婚慰謝料を払わないとどうなるかは、支払いの約束をしているかどうかで大きく異なります。
支払いを約束していない場合でも、支払い義務があると判断されれば裁判に発展するリスクがあります。
一方、すでに支払いを約束している場合や裁判で決定した場合に払わないと、強制執行により財産や給与が差し押さえられる可能性があるのです。
離婚慰謝料の支払い義務があるかどうかは、離婚原因や婚姻関係の破綻状況によって判断されます。
また、時効が成立している場合は支払い義務を免れる可能性もあります。
もし支払うべき離婚慰謝料があっても経済的に困難な場合は、分割払いの交渉や減額交渉を検討しましょう。
いずれの場合も、放置せずに誠実に対応することが問題の解決につながります。
離婚慰謝料の問題は法律的にも感情的にも複雑なため、状況に応じて弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。