離婚しても苗字を変えない方法|婚氏続称制度とは?手続きの流れ

離婚する際、苗字を元に戻すべきか悩む方は少なくありません。
特に子どもがいる場合は、子どもと違う苗字になることに抵抗を感じる人も多いでしょう。
「離婚しても今の苗字を変えずにそのまま使い続けることはできるの?」という疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
実は離婚後も苗字を変えないという選択肢は、法律で認められています。
しかし手続きの方法や期限、子どもの苗字との関係など、知っておくべきことがたくさんあります。
当記事では、離婚後も苗字を変えずに使い続ける方法について詳しく解説していきます。
離婚後の苗字について悩んでいる方に寄り添い、選択肢とその影響を分かりやすく説明します。
ご自身の状況に合わせた判断ができるよう、必要な情報をしっかりと確認してくださいね。
離婚後も旧姓に戻さず現在の姓を使い続ける方法は?
離婚をした際、多くの方は旧姓に戻すか現在の姓を使い続けるか迷うことでしょう。
法律上では、離婚後に苗字を変えずに使い続けることは「婚氏続称制度」というしくみで認められています。
この制度を使えば、離婚後も夫の姓をそのまま名乗ることが可能です。
ただし、手続きには期限があり、離婚届を提出する際に一緒に申請する必要があります。
離婚時に苗字を変えるデメリット
離婚をきっかけに苗字を変えると、思った以上に多くの手間や問題が生じる可能性があります。
まず、運転免許証やパスポート、銀行口座など、あらゆる身分証明書や登録情報の変更手続きが必要になります。
これらの手続きは一度にできるものではなく、それぞれの機関に個別に申請しなければなりません。
特に仕事面では、取引先や顧客との関係で苗字が変わることによる混乱が生じる可能性があります。
長年使ってきたメールアドレスが使えなくなったり、名刺を全て作り直したりする必要も出てくるでしょう。
また、子どもがいる場合は、親子で苗字が異なることで子どもが学校や周囲から質問されるといった状況も考えられます。
書類手続きの負担 | 免許証、パスポート、銀行口座など多数の変更手続きが必要 |
---|---|
仕事への影響 | 取引先や顧客との関係に混乱が生じる可能性あり |
子どもへの影響 | 親子で苗字が違うことによる子どもの心理的負担 |
社会的信用 | 長年使ってきた名前での実績や信用の継続が難しくなる |
このように、離婚時に苗字を変えることは、単なる名前の変更以上に生活のさまざまな面に影響を及ぼします。
離婚したら必ず苗字を変更する必要があるのか
結論から言うと、離婚しても必ずしも苗字を変える必要はありません。
日本の民法では、婚姻によって夫または妻の苗字を名乗ることになりますが、離婚後もその苗字を続けて使うことが認められています。
これを「婚氏続称制度」と呼び、離婚届を提出する際に届け出ることで利用できます。
婚氏続称の申し出をすれば、離婚後も婚姻中の苗字を変えずに使い続けることが可能です。
例えば、結婚前に「鈴木」という苗字だった女性が、結婚して「佐藤」になり、離婚する場合を考えてみましょう。
この女性は離婚後、元の「鈴木」に戻すか、「佐藤」のままでいるかを選ぶことができます。
特に子どもがいる場合や社会的な立場を考慮すると、婚氏続称を選ぶ方も少なくありません。
- 子どもと同じ苗字を維持したい場合
- 仕事上の関係や資格などで現在の苗字が広く知られている場合
- 各種手続きの手間を避けたい場合
- 社会的なつながりを維持したい場合
ただし、婚氏続称の手続きは離婚届と同時に行う必要があり、期限を過ぎると原則として旧姓に戻ることになります。
離婚を考えている方は、苗字を変えるかどうかの判断も含めて、事前に十分検討しておくことをおすすめします。
離婚後、子どもの苗字は変更されるのか?
離婚した場合、自分の苗字が変わっても子どもの苗字は自動的には変更されません。
子どもの戸籍は親の離婚によって直接影響を受けることなく、そのまま維持されます。
このため、離婚後に親が旧姓に戻したとしても、子どもの苗字は婚姻中のままとなります。
子どもの苗字を変更するためには、別途家庭裁判所での手続きが必要になります。
離婚しても子どもの苗字は自動的に変わらない
多くの方が「離婚すれば子どもの苗字も自動的に変わる」と思いがちですが、実際はそうではありません。
日本の法律では、子どもの苗字は親の離婚によって自動的に変更されることはないと定められています。
例えば、母親が結婚時に「佐藤」という夫の苗字に変え、離婚後に旧姓の「鈴木」に戻したとしても、子どもの苗字は「佐藤」のままです。
これは親権の有無に関わらず同じで、親権を持つ側の苗字に自動的に合わせられることもありません。
このような状況では、母子で苗字が異なることになり、学校や病院などで説明が必要になることもあるでしょう。
ただし、離婚時に婚氏続称制度を利用すれば、親子で同じ苗字を維持することができます。
子どもの戸籍 | 離婚しても変更されない |
---|---|
親権との関係 | 親権者の苗字に自動的に変わることはない |
離婚届の影響 | 離婚届の提出だけでは子どもの苗字は変わらない |
戸籍の移動 | 親権者の戸籍に入るが、苗字は変わらない |
このように、離婚後に親子で苗字が異なる状況を避けたい場合は、離婚時に婚氏続称を選択するか、子どもの苗字変更の手続きを検討する必要があります。
子どもの苗字を変更する方法
子どもの苗字を変更したい場合は、家庭裁判所に「子の氏の変更許可」の申立てを行う必要があります。
この手続きは親権者が行いますが、15歳以上の子どもの場合は本人の同意も必要となります。
申立ては子どもの住所地を管轄する家庭裁判所で行い、申立書と必要書類を提出します。
申立てには「子の氏の変更を必要とする事由」を具体的に記載する必要があります。
例えば、母親が離婚後に旧姓に戻り、子どもが母親と異なる苗字であることで学校生活に支障が出ている場合などが該当します。
裁判所は子どもの福祉や生活環境を考慮して許可するかどうかを判断します。
- 家庭裁判所に「子の氏の変更許可」の申立書を提出
- 必要書類(戸籍謄本、理由書など)を添付
- 申立手数料(収入印紙)を納付
- 裁判所での審査(場合により面談あり)
- 許可が下りたら市区町村役場で戸籍の変更手続き
手続きには通常1〜2ヶ月程度かかり、申立てから許可までの間に裁判官との面談が行われることもあります。
許可が下りれば、その許可書を持って市区町村役場で戸籍の変更手続きを行います。
子どもの苗字を変更するデメリット
子どもの苗字を変更することには、いくつかのデメリットや考慮すべき点があります。
まず、子どもにとって苗字は自分のアイデンティティの一部であり、その変更は心理的な影響を与える可能性があります。
特に学齢期の子どもの場合、友人や先生に対して苗字が変わった理由を説明する必要が生じるかもしれません。
子どもが既に現在の苗字に慣れ親しんでいる場合、変更によって混乱や不安を感じる可能性もあります。
また、手続き面でも煩雑さがあり、家庭裁判所での申立てや審査のプロセスを経る必要があります。
さらに、もう一方の親が反対している場合、トラブルになる可能性もあるでしょう。
もう一方の親の同意は法的には必須ではありませんが、協力的でない場合は手続きがより複雑になります。
心理的影響 | 子どものアイデンティティや帰属意識に影響を与える可能性 |
---|---|
社会的影響 | 学校や友人関係で説明が必要になる |
手続きの煩雑さ | 家庭裁判所での申立てや審査が必要 |
親同士の関係 | もう一方の親との間でトラブルになる可能性 |
子どもの苗字変更を検討する際は、子ども自身の気持ちを第一に考え、年齢に応じて本人の意見も尊重することが大切です。
また、一時的な感情ではなく、長期的な視点から子どもにとって何がベストかを考慮する必要があります。

苗字を変えずに離婚する手続きの流れ
離婚後も現在の苗字をそのまま使い続けるには、「婚氏続称届」を提出する必要があります。
この手続きは離婚届と同時に行うことが一般的で、期限を過ぎると旧姓に自動的に戻ってしまいます。
手続きはそれほど複雑ではありませんが、タイミングを間違えると取り返しがつかない場合もあるため注意が必要です。
ここでは、苗字を変えずに離婚する具体的な手続きの流れについて解説します。
婚氏続称制度の利用手続き
婚氏続称制度を利用するための手続きは、基本的に離婚届と一緒に行います。
離婚届の用紙には「婚姻中の氏を称する届」という欄があり、ここにチェックを入れることで婚氏続称の意思表示ができます。
具体的には、離婚届の右側に「離婚後も婚姻中の氏を称する届」という欄があるので、そこに記入します。
この欄に届出人の氏名を記入し、署名・押印することで、離婚後も現在の苗字を使い続けることができます。
離婚届の提出先は市区町村の役所で、本籍地または住所地の役所のどちらでも受け付けています。
ただし、婚氏続称の届出は本人が直接行う必要があり、代理人による提出はできません。
- 離婚届用紙を入手する(市区町村役所や法務局で入手可能)
- 離婚届の必要事項を記入する
- 離婚届の右側にある「離婚後も婚姻中の氏を称する届」欄に記入
- 本人が直接、市区町村役所に提出する
- 提出時に本人確認書類を提示する
婚氏続称の届出は、離婚届と同時に提出するのが一般的ですが、離婚成立後3ヶ月以内であれば別途提出することも可能です。
ただし、この場合は「離婚の際に称していた氏を称する届」という別の書類を使用します。
婚氏続称制度の申請期限
婚氏続称制度を利用するための申請期限は、離婚の方法によって異なります。
協議離婚の場合、基本的には離婚届と同時に婚氏続称の届出をするのが無難です。
ただし、離婚届を提出した後でも、3ヶ月以内であれば婚氏続称の届出が可能です。
この3ヶ月という期限を過ぎると、原則として旧姓に自動的に戻ることになるため注意が必要です。
一方、調停離婚や裁判離婚の場合は、離婚の効力が生じてから3ヶ月以内に婚氏続称の届出を行う必要があります。
調停離婚の場合は調停成立の日から、裁判離婚の場合は判決確定の日から3ヶ月以内が期限となります。
離婚の種類 | 婚氏続称届の提出期限 |
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協議離婚 | 離婚届提出と同時、または提出後3ヶ月以内 |
調停離婚 | 調停成立の日から3ヶ月以内 |
裁判離婚 | 判決確定の日から3ヶ月以内 |
和解・認諾による離婚 | 和解・認諾の日から3ヶ月以内 |
この期限を過ぎると原則として自動的に旧姓に戻ることになり、その後再び婚姻時の苗字に変更するには家庭裁判所の許可が必要になります。
離婚を考えている方は、この期限を念頭に置いて、苗字をどうするか事前によく検討しておくことをおすすめします。
一度婚氏続称を選択した場合、後から旧姓に戻すことは可能か?
離婚時に婚氏続称を選び、夫の姓を継続して使用することを決めた後で、気持ちや状況が変わって旧姓に戻したいと考えることもあるでしょう。
結論から言うと、一度婚氏続称を選択した後でも、旧姓に戻すことは可能です。
ただし、離婚時の3ヶ月の期限を過ぎた場合は、家庭裁判所の許可が必要となります。
家庭裁判所での手続きは時間と費用がかかるため、離婚時にどちらの苗字を使うか慎重に検討することが大切です。
婚氏続称から旧姓に戻すには家庭裁判所の許可が必要となる
離婚時に婚氏続称を選択した後、やはり旧姓に戻したいと思った場合の手続きは簡単ではありません。
民法に基づき、一度婚氏続称を選んだ後に苗字を変更するには「氏の変更許可」の申立てを家庭裁判所に行う必要があります。
この手続きは、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に「氏の変更許可申立書」を提出して行います。
婚氏続称から旧姓に戻すには「やむを得ない事由」があることを裁判所に認めてもらう必要があります。
具体的な申立ての流れは以下のとおりです。
- 家庭裁判所に「氏の変更許可申立書」を提出
- 戸籍謄本など必要書類を添付
- 申立て理由書に「やむを得ない事由」を詳しく記載
- 申立手数料(収入印紙800円程度)を納付
- 裁判所での審査(場合により面談あり)
- 許可が下りたら市区町村役場で戸籍の変更手続き
審査期間は通常1〜2ヶ月程度かかります。
ただし、「やむを得ない事由」が認められなければ許可されないため、単に「気が変わった」という理由では難しい場合があります。
申立てが認められたら、許可審判書を持って本籍地の市区町村役場で戸籍の変更手続きを行います。
氏の変更が認められる「やむを得ない事由」とは?
家庭裁判所で氏の変更が認められるためには、「やむを得ない事由」があることを証明する必要があります。
では、具体的にどのような事由が「やむを得ない」と認められるのでしょうか。
裁判所の判断基準は事例によって異なりますが、以下のような事由が認められる可能性があります。
離婚後に元配偶者との関係が悪化し、同じ苗字を使い続けることで精神的苦痛を受ける場合は認められやすい傾向があります。
また、再婚を予定しており、新しい家族との関係を円滑にするために苗字を変更したい場合も考慮されることがあります。
仕事上の理由、例えば旧姓で築いたキャリアや実績があり、職業上の不利益を避けるために旧姓に戻したい場合も検討されます。
認められやすい事由 | 具体例 |
---|---|
元配偶者との関係悪化 | DVや嫌がらせがあり、同じ苗字でいることが精神的負担になる |
再婚の予定 | 新しい家族との一体感を持つために氏を変更したい |
職業上の必要性 | 旧姓で築いたキャリアがあり、仕事上の混乱を避けたい |
子どもとの関係 | 親権を持つ子どもと同じ苗字になりたい |
一方で、単に「苗字を変えたい」「気が変わった」といった理由だけでは、「やむを得ない事由」として認められにくい傾向があります。
申立てを行う際は、具体的な状況や苗字を変更する必要性を詳しく説明し、可能であれば証拠書類も添えると良いでしょう。
氏の変更申立ては、状況によっては専門家のサポートを受けることも検討すると安心です。
弁護士や司法書士に相談すれば、申立書の作成や必要書類の準備など、手続き全般についてアドバイスを受けることができます。

よくある質問
離婚後の苗字についてよくある質問をまとめました。これから離婚を考えている方や、すでに離婚して苗字のことで悩んでいる方の参考になれば幸いです。
- 離婚後に苗字を変えないメリットとデメリットは何ですか?
- 離婚後も苗字を変えない場合、子供の戸籍はどうなりますか?
- 離婚後に苗字を変えない割合はどのくらいですか?
- 離婚後も苗字を変えない母親が増えている理由を教えてください。
- 離婚後も旧姓に戻さずそのままの場合、再婚時の手続きはどうなりますか?
- 子供がいない場合でも離婚後に苗字を変えないことはできますか?
- 婚氏続称の届出の書き方について教えてください。
まとめ
離婚後も苗字を変えずに使い続けることは、「婚氏続称制度」という制度で認められています。
特に子どもがいる場合、親子で同じ苗字を維持できるメリットは大きいでしょう。
婚氏続称を選択するには、離婚届提出時または離婚成立後3ヶ月以内に届出を行う必要があります。
また、子どもの苗字は親の離婚によって自動的には変わらないため、変更を希望する場合は家庭裁判所での手続きが必要です。
一度婚氏続称を選んだ後に旧姓に戻したい場合も、家庭裁判所での「氏の変更許可」の申立てが必要となります。
離婚を考えている方は、苗字をどうするかを含め、様々な事項について事前によく検討し、必要な情報を集めておくことをおすすめします。