婚約破棄の正当理由と不当理由を法的視点から解説

婚約破棄

婚約破棄。結婚を約束した相手からの突然の別れ話は、精神的にも経済的にも大きな打撃となります。

「婚約を破棄されたら法的に対抗できるの?」「正当な理由があれば自分から婚約を解消することはできる?」そんな疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。

婚約破棄は単なる別れ話ではなく、法的な問題を含む複雑な事態です。

慰謝料請求や結納金の返還など、知っておくべき権利や対処法があります。

この記事では、婚約破棄に関する法的知識や請求できる補償、適切な対処法について詳しく解説していきます。

辛い状況にある方にも寄り添いながら、法的な観点から婚約破棄について分かりやすく解説します。

目次

婚約破棄とは?意味と定義

結婚の約束をした後に一方的に破棄することを「婚約破棄」と言います。

婚約は結婚に向けた準備段階であり、結婚式の日取りや新居の準備など様々な計画が進められます。

そのような状況で突然婚約破棄を告げられると、精神的ショックはもちろん、経済的な損失も大きくなります。

このセクションでは婚約破棄の基本的な意味と、法的にどのような問題が発生するのかを順に見ていきましょう。

婚約とは

婚約とは将来結婚することを約束する行為です。

日本の法律上、婚約は「婚姻予約」と位置づけられています。

具体的な形式としては、結納や婚約指輪の交換、婚約パーティーの開催などがあります。

婚約は口約束だけでも成立する可能性があり、必ずしも形式的な儀式が必要ではありません

ただし、口約束のみの場合は後々のトラブルを避けるため、メールやLINEなどの記録を残しておくことが望ましいでしょう。

「結婚しよう」という言葉だけでなく、具体的な結婚の時期や式場の下見をしたなど、結婚の意思が明確に示されていることが重要です。

婚約が成立すると、互いに誠実に結婚の準備を進める義務が生じます。

婚約は単なる約束ではなく、法的な効力を持つ契約関係とみなされることがあります。

婚約が成立すると、結婚に向けて誠実に努力する義務が双方に発生します。

特に重要なのは、正当な理由なく婚約を破棄した場合、相手に対して損害賠償責任が生じる可能性があるということです。

婚約中に発生する義務としては、以下のようなものが挙げられます。

婚約中に発生する義務
  • 結婚の準備を誠実に進める義務
  • 婚約関係にあることに相応しい誠実な行動をとる義務
  • 相手の家族との関係構築に努める義務
  • 経済的な計画を共有・準備する義務

これらの義務に背いて一方的に婚約を破棄すると、慰謝料請求などの対象となることがあります。

ただし、すべての婚約破棄が法的責任を伴うわけではなく、正当な理由がある場合は賠償責任を負わないケースもあります。

婚約破棄による損害賠償請求には証拠を確保することが重要

婚約破棄による損害賠償請求を行う際には、まず婚約の事実を証明する必要があります。

婚約の証拠として役立つのは、結納や婚約指輪の写真、婚約パーティーの招待状や写真、結婚式場の予約確認書などです

口約束だけの場合は、LINEやメールのやり取り、SNSへの投稿なども証拠として活用できます。

また、婚約破棄によって発生した具体的な損害の証拠も重要です。

例えば、結婚式場のキャンセル料の領収書、新居の契約書や解約手数料、結婚準備のために購入した物品の領収書などを保管しておきましょう。

精神的苦痛の証明には、医師の診断書やカウンセリングの記録なども有効です。

これらの証拠は、法的手続きを進める際に非常に重要な役割を果たします。

証拠の種類具体例重要度
婚約の証明結納の写真、婚約指輪、結婚式場の予約書★★★
経済的損失の証明キャンセル料領収書、購入品の領収書★★★
精神的苦痛の証明診断書、カウンセリング記録★★
電子的証拠LINE、メール、SNS投稿★★

婚約破棄のトラブルに直面した場合、これらの証拠をもとに早めに弁護士に相談することをおすすめします。

婚約破棄が法律的に正当とされる理由とは

婚約破棄には「正当な理由」と「不当な理由」があり、その区別は法的責任を問われるかどうかの分かれ目となります。

正当な理由による婚約破棄であれば、慰謝料などの賠償責任を負わないケースが多いです。

婚約は結婚前の重要なステップですが、やむを得ない事情が発生した場合は解消が認められます。

それでは、具体的にどのような理由が法律的に正当と認められるのか見ていきましょう。

相手が他の人と肉体関係を持った不貞行為が判明した場合

婚約中の不貞行為は、信頼関係を大きく損なう行為です。

婚約者の浮気や不貞行為が発覚した場合、これを理由とする婚約破棄は法的に正当と認められます

婚約は将来の結婚を前提とした誠実な関係であり、相手を裏切る行為があった場合は信頼回復が困難になります。

具体的には、婚約者が第三者と性的関係を持ったことが判明した場合や、別の恋愛関係を隠していたことが発覚した場合などが該当します。

このような場合、浮気をされた側は婚約を破棄しても慰謝料を支払う必要はなく、むしろ浮気した側に対して慰謝料を請求できることがあります。

ただし、不貞行為の証拠を確保することが重要なポイントです。

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DVやモラハラ被害を受けた場合

婚約者からの暴力や精神的な嫌がらせは、婚約破棄の正当な理由として認められます。

身体的暴力だけでなく、言葉による脅し、極端な束縛、人格否定などの精神的暴力も含まれます。

DVやモラハラは結婚後にエスカレートすることが多いため、婚約段階でこのような兆候が見られた場合は早めに関係を解消するべきでしょう。

具体的なDVやモラハラの例としては、以下のようなものがあります。

具体的なDVやモラハラの例
  • 身体的な暴力や暴力的な脅し
  • 人格を否定する言動や侮辱
  • 行動の過度な制限や監視
  • 友人や家族との関係を断たせようとする行為
  • 経済的な支配や金銭の使用制限

このような被害を受けた場合は、証拠となる写真や録音、メッセージなどを保存しておくことが重要です。

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精神や身体に重い障害を抱える状態となった場合

婚約後に一方が重い障害を負った場合も、正当な婚約破棄の理由となり得ます。

ただし、この点は非常にデリケートな問題であり、裁判所の判断も事例によって異なります。

一般的には、婚姻生活を送ることが著しく困難になる程度の重度の障害である場合に限り、正当理由として認められる傾向があります

例えば、婚約後に事故や病気で長期的な介護が必要な状態になった場合や、重度の精神疾患を発症し通常の婚姻関係を維持するのが困難になった場合などが考えられます。

しかし、軽度の障害や治療可能な病気を理由とした婚約破棄は、不当と判断されるケースが多いでしょう。

このような状況では、相手の感情に配慮しながら誠実に話し合うことが重要です。

他に婚姻関係の継続が困難となる重大な理由がある場合

上記以外にも、婚姻関係の継続を困難にする重大な理由があれば、婚約破棄は正当と認められることがあります。

例えば、婚約後に相手の重大な犯罪歴が判明した場合は、信頼関係の根幹を揺るがす事実として認められます。

また、婚約時に告げられていなかった多額の借金や負債が発覚した場合も、正当な理由になり得ます

その他の正当な理由として以下のようなケースが考えられます。

正当と認められる可能性がある理由説明
重大な嘘や隠し事の発覚前婚や子供の存在を隠していた場合など
依存症の問題アルコール、ギャンブル、薬物などの深刻な依存症
著しい浪費癖将来の経済的破綻につながる無計画な浪費行動
家族との重大な不和同居する家族との著しい対立や虐待的な状況

ただし、これらの理由が正当と認められるかどうかは、個々の状況や裁判所の判断によって異なります。

正当な理由による婚約破棄が認められた判例

過去の裁判例から、正当な理由による婚約破棄が認められたケースを見てみましょう。

裁判所は「婚姻の本質に関わる重大な事由」があるかどうかを重視して判断する傾向があります

例えば、東京地裁の判決では、婚約者が別の女性と不貞行為を行っていたことが発覚し、女性側からの婚約破棄を正当と認めた事例があります。

また、大阪地裁では、婚約者から繰り返し暴力を受けていた女性の婚約破棄を正当と認め、慰謝料請求を棄却した判例があります。

さらに、婚約者が多額の借金を隠していたことが発覚した事例でも、婚約破棄の正当性が認められています。

一方、単なる相性の不一致や好みの違いなどの理由では、婚約破棄の正当性は認められにくいことも覚えておきましょう。

正当な理由があると思われるケースでも、できるだけ証拠を集めておくことが、後のトラブル回避に役立ちます。

不当だとみなされる婚約破棄の理由とは

婚約破棄の中には、法的に「不当」と判断されるケースがあります。

不当な理由による婚約破棄は、相手に対して慰謝料などの賠償責任を負う可能性が高くなります。

どのような理由が「不当」とみなされるのか、具体的に見ていきましょう。

性格や価値観が合わないことを理由とする場合

「性格が合わない」「価値観の違いに気づいた」といった理由での婚約破棄は、法的に不当と判断されるケースが多いです。

婚約の段階で通常は十分に交際期間があり、その間に相手の性格や価値観を知る機会があったはずだからです

突然「性格が合わない」と言い出すことは、婚約の約束を軽視した行為とみなされます。

もちろん、婚約後に初めて明らかになった重大な性格的問題があれば別ですが、日常的な好みの違いや小さな価値観の相違は不当な理由とされるでしょう。

特に結婚式の日取りが近づいてから急に言い出す場合、相手の精神的・経済的損害は大きくなります。

婚約前によく話し合い、お互いの価値観や生活習慣について理解を深めておくことが大切です。

ただ相手に対して何の感情もなくなった場合

「愛情が冷めた」「気持ちが変わった」というだけの理由での婚約破棄も、法的には不当と判断されることが多いです。

婚約は感情だけでなく、法的な約束としての側面も持っているため、単なる気持ちの変化は破棄の正当理由にはなりません

特に相手が結婚に向けて様々な準備を進めていた場合、経済的・時間的な損失が大きくなります。

感情の変化だけで婚約を破棄する場合、相手に対して適切な補償を行う必要があるでしょう。

また、他に好きな人ができたという理由での婚約破棄も、不当と判断される可能性が高いです。

このようなケースでは、できるだけ早く誠実に話し合い、相手の傷を最小限に抑える努力が求められます。

信仰心が不一致の場合

宗教や信仰の違いを理由とした婚約破棄も、通常は不当と判断されるケースが多いです。

婚約前に相手の宗教観を確認する機会があったはずであり、婚約後に突然持ち出す理由としては弱いと考えられます

ただし、婚約後に相手が極端な宗教活動を始めた場合や、結婚生活に著しい支障をきたすような宗教的行為を求められるようになった場合は別です。

一般的な宗教観の違いであれば、お互いを尊重しながら共存する方法を模索するのが望ましいでしょう。

婚約前から相手の宗教や信仰について知っていた場合、それを後から理由にするのは不誠実な行為と判断されます。

信仰の問題は深刻なライフスタイルの違いを生むこともあるため、交際の早い段階で話し合っておくことが大切です。

他に契約解除が法律的に正当とされない事情

上記以外にも、法的に不当とされる婚約破棄の理由はいくつかあります。

婚約時に既に知っていた事情や、婚姻生活に重大な影響を与えないような理由は、正当な婚約破棄の理由とは認められません

以下のような理由は、一般的に不当とみなされます。

不当とされる理由説明
経済状況の変化一時的な経済的困難や予想の範囲内の収入減少
身体的な容姿の変化加齢による自然な変化や小さな体型変化
家族の反対婚約前から分かっていた家族の意見や単なる好みの問題
仕事や転勤の都合予想できた転勤や仕事の変化
趣味や生活習慣の違い婚約前から分かっていた日常的な習慣の違い

これらの理由で婚約を破棄する場合、相手に対して適切な補償を行う必要があります。

また、第三者(親や友人など)の意見だけを理由にした婚約破棄も、正当とは認められにくいでしょう。

結婚は当事者同士の問題であり、周囲の意見に流されるだけでは責任ある行動とは言えません。

婚約破棄が不当と判断され慰謝料が命じられた事例

過去の判例から、婚約破棄が不当と判断された事例を見てみましょう。

裁判所は「婚約者の期待を裏切る程度」「準備の進捗状況」「損害の大きさ」などを総合的に考慮して判断します

例えば、結婚式の1週間前に「気持ちが変わった」という理由だけで婚約を破棄したケースでは、300万円の慰謝料が命じられました。

また、婚約指輪を贈った後に「親の反対」を理由に婚約を破棄したケースでは、指輪の返還に加えて慰謝料の支払いが命じられています。

さらに、新居の契約や家具の購入が終わった段階での婚約破棄では、それらの費用に加えて精神的苦痛に対する慰謝料が認められたケースもあります。

こうした事例からも分かるように、婚約は軽々しく破棄できるものではなく、相応の責任を伴う約束なのです。

不当な理由での婚約破棄を避けるためにも、婚約前の交際期間中にしっかりと相手を知る努力が大切でしょう。

婚約破棄で請求できる金銭的補償

不当な理由で婚約を破棄された場合、様々な金銭的補償を請求できる可能性があります。

婚約破棄によって生じた経済的・精神的損害について、適切な補償を求める権利があります。

具体的にどのような補償が認められるのか、項目ごとに見ていきましょう。

精神的苦痛に対する慰謝料

婚約破棄によって生じる精神的苦痛に対して、慰謝料を請求することができます。

慰謝料の金額は破棄の理由、婚約期間、結婚の準備状況、破棄のタイミングなどを考慮して決められます

一般的に、結婚式の直前になるほど、また準備が進んでいるほど慰謝料額は高くなる傾向にあります。

慰謝料の相場は50万円~300万円程度ですが、状況によってはそれ以上になることもあります。

特に、公の場で婚約を発表していた場合や、社会的な体面が損なわれた場合は、その分の精神的苦痛も考慮されます。

慰謝料を請求する際は、精神的苦痛の証拠(医師の診断書など)があるとより有利になるでしょう。

返還請求できる結納金

結納金は婚約の証として交換される金品であり、婚約が破棄された場合の取り扱いが問題になります。

基本的に、婚約破棄の責任がある側は、相手から受け取った結納金を返還する義務があります

また、自分が相手に渡した結納金の返還を請求することもできます。

ただし、婚約の期間が長く、結納から相当の時間が経過している場合は、返還義務が軽減されることもあります。

結納品が消費されてしまった場合(食べ物など)は、その価値に相当する金銭での返還が求められます。

結納金の返還請求権は、婚約破棄の時点から3年以内に行使する必要があるので注意しましょう。

結納品の種類返還の取り扱い
現金全額返還が原則
食べ物・飲み物相当額の金銭で返還
衣類や装飾品現物または相当額で返還
記念品原則として返還義務あり

キャンセル料負担(結婚式や新婚旅行など)

婚約破棄によって発生する各種キャンセル料の負担も、請求できる重要な項目です。

責任のある側が負担すべきキャンセル料には、結婚式場、披露宴会場、新婚旅行、衣装レンタル等の解約料が含まれます

これらのキャンセル料は契約内容によって大きく異なり、直前になるほど高額になる傾向があります。

例えば、結婚式場のキャンセル料は、1か月前で見積もり金額の50%、1週間前だと80%以上になることも珍しくありません。

請求する際には、契約書やキャンセル料の領収書など、実際に支払ったことを証明する書類を保管しておきましょう。

状況によっては、招待状の印刷費用や引き出物のキャンセル料なども対象になり得ます。

子どもを出産した場合の養育費

婚約期間中に子どもが生まれた、または出産予定がある場合の補償も考慮する必要があります。

婚約破棄の理由に関わらず、子どもの父親には養育費を支払う法的義務があります

養育費の金額は、父親の収入や子どもの年齢などを考慮して決定されます。

一般的な相場は、子ども1人あたり月額3〜5万円程度ですが、父親の収入によって変動します。

また、出産費用や産前産後の医療費、母親の休業補償なども請求できる可能性があります。

特に、結婚を前提に妊娠した場合は、婚約破棄による精神的苦痛も大きいため、慰謝料額が高くなることがあります。

子どもの権利を守るためにも、法的な手続きをしっかりと行うことが重要です。

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家財道具購入費用の負担

結婚に向けて購入した家財道具や新居の準備費用も、補償の対象となります。

婚約破棄の責任がある側は、結婚のために特別に用意した家具や電化製品などの費用を負担する義務があります

具体的には、新居の家具、家電製品、寝具、食器など、結婚生活のために購入したものが対象になります。

中古品として売却できる場合は、その差額分を請求することが一般的です。

また、新居の敷金や礼金、不動産仲介手数料なども、破棄の責任がある側が負担すべき費用です。

請求する際は、購入品の領収書や契約書などを保管しておくことが重要です。

通常なら得られていたはずの収入

結婚を前提に仕事を辞めた場合など、婚約破棄によって失った収入も補償の対象になることがあります。

結婚や引っ越しのために退職した場合、その後の再就職までの期間の逸失利益を請求できる可能性があります

逸失利益の算定には、以前の収入や再就職までの期間、再就職後の収入差などが考慮されます。

例えば、年収500万円の仕事を辞め、再就職に6か月かかった場合、その間の収入約250万円が逸失利益となります。

また、再就職後の収入が以前より低い場合は、その差額分も一定期間請求できることがあります。

ただし、逸失利益の請求は証明が難しいため、退職理由を明確にした退職証明書や給与明細などの証拠を残しておくことが重要です。

婚約指輪に関するトラブル解決

婚約指輪は婚約の証として大きな意味を持つ贈り物であり、破棄時のトラブルが多い項目です。

婚約指輪は「条件付き贈与」とみなされるため、婚約破棄の責任がある側は指輪を返還する義務があります

男性側に責任がある場合、女性は指輪をそのまま保持できるのが一般的です。

一方、女性側に責任がある場合は、指輪を返還するか、相当額を支払う必要があります。

婚約期間が長く、指輪を日常的に使用していた場合は、価値の減少分を考慮することもあります。

トラブルを避けるためには、婚約指輪を贈る際に、「婚約が破棄された場合の取り扱い」について予め話し合っておくとよいでしょう。

破棄の責任婚約指輪の取り扱い
男性側に責任女性が保持できる
女性側に責任返還または金銭で補償
双方に責任状況に応じて協議

婚約破棄された場合に行うべき手続きと対処法

婚約破棄を告げられた場合、感情的になるのは自然なことですが、冷静に対処することが大切です。

適切な手続きを踏むことで、正当な補償を受けられる可能性が高まります。

具体的にどのような手順で対応すべきか、順を追って見ていきましょう。

婚約破棄された場合に行うべき手続きと対処法
  • 正当な理由があるか確かめる
  • 不当な理由の場合は請求手続きを行う
  • なるべく早めに弁護士と相談する

正当な理由があるか確かめる

まず最初に、相手が主張する婚約破棄の理由が法的に正当なものか確認する必要があります。

婚約破棄の理由が不貞行為や暴力などの正当なものであれば、相手に賠償責任はない可能性が高いです

一方、「気持ちが変わった」「性格が合わない」といった理由は、法的には不当とみなされることが多いです。

理由の確認は、できるだけ冷静に行い、可能であれば文書や録音などの形で記録に残しておくとよいでしょう。

また、相手の言い分を全て否定するのではなく、まずは話をよく聞くことが重要です。

場合によっては、話し合いによって関係を修復できる可能性もあります。

不当な理由の場合は請求手続きを行う

婚約破棄の理由が不当だと判断される場合は、適切な補償を請求するための手続きを進めましょう。

まずは婚約の証拠や支出した費用の証拠を集め、具体的な損害額を算出することが大切です

具体的な請求手続きの流れは以下の通りです。

具体的な請求手続きの流れ
  1. 証拠の収集(結納の写真、結婚式場の契約書、購入品の領収書など)
  2. 損害額の算出(精神的慰謝料、キャンセル料、購入費用など)
  3. 内容証明郵便での請求(相手に対して書面で請求の意思表示)
  4. 相手との交渉(直接または弁護士を通じて)
  5. 合意できない場合は調停または訴訟

内容証明郵便で請求する際は、冷静な文面で事実関係と請求内容を明確に記載することが重要です。

感情的な文章は避け、客観的な事実と法的根拠に基づいた請求を心がけましょう。

なるべく早めに弁護士と相談する

婚約破棄のトラブルは法的に複雑な側面があるため、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士は婚約破棄の法的責任の有無や請求できる補償の範囲について、専門的なアドバイスを提供してくれます

特に以下のような場合は、弁護士への相談が有効です。

弁護士への相談が有効な場合
  • 高額な損害が発生している場合
  • 相手が補償に応じない場合
  • 子どもがいる場合
  • 不動産や高額な財産が絡む場合
  • 相手との交渉が難航している場合

弁護士費用は初回相談なら5,000円~1万円程度、依頼する場合は着手金として20万円前後かかることが多いです。

ただし、最終的に得られる補償額を考えると、弁護士に依頼することでトータルではメリットが大きいケースも少なくありません。

弁護士を探す際は、家事事件や男女問題を得意とする弁護士を選ぶとよいでしょう。

弁護士に相談するタイミング主なメリット
婚約破棄直後証拠収集の指導、適切な対応方法の助言
交渉開始前適正な請求額の算定、交渉戦略の立案
相手が補償を拒否した後法的手続きの開始、示談交渉の代行
調停・訴訟の検討時勝訴の見込み評価、裁判手続きの代行

法的手続きは時間制限があるケースも多いので、悩んでいる間に請求権が時効にかからないよう、早めの相談が大切です。

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婚約解消を希望する場合に進めるべき流れ

自分から婚約を解消したい場合も、法的リスクを最小限に抑えるための適切な手順があります。

感情的な対応は避け、相手の心情にも配慮しながら誠実に進めることが大切です。

婚約解消を円滑に、そして法的トラブルを避けて進めるポイントを見ていきましょう。

法的トラブルを避けて進めるポイント
  • 正当な理由を根拠に婚約破棄を主張する
  • 示談書の作成を進める

正当な理由を根拠に婚約破棄を主張する

婚約を解消したい場合、まずは正当な理由があるかどうかを確認することが重要です。

法的に正当と認められる理由がある場合は、慰謝料などの賠償責任を負うリスクが低くなります

正当な理由としては、相手の不貞行為、暴力やモラハラ、重大な経済的問題の隠蔽などが挙げられます。

これらの事実がある場合は、できるだけ証拠を収集しておくことが大切です。

例えば、暴力を受けた場合は診断書や写真、モラハラの場合はメッセージのやり取りなどが証拠になります。

正当な理由がない場合は、誠実に相手と話し合い、適切な補償を提案することで円満な解決を目指しましょう。

正当な理由として認められやすいもの
  • 不貞行為(浮気や不誠実な行為)
  • DVやモラハラなどの暴力的行為
  • 重大な病気や障害の隠蔽
  • 多額の借金や経済的問題の隠蔽
  • 犯罪歴などの重大な経歴の隠蔽

ただし、「性格が合わない」「好きではなくなった」などの理由は法的に正当とは認められにくいため、そのような場合は何らかの補償を考慮する必要があります。

示談書の作成を進める

婚約解消に双方が合意した場合は、後のトラブルを防ぐために示談書を作成することをおすすめします。

示談書には、婚約解消の合意、結納金や贈り物の取り扱い、キャンセル料の負担などを明記します

基本的な示談書に含めるべき内容は以下の通りです。

基本的な示談書に含めるべき内容
  1. 当事者の氏名と住所
  2. 婚約解消の合意と日付
  3. 結納金や婚約指輪などの返還についての取り決め
  4. 結婚式場などのキャンセル料の負担方法
  5. 慰謝料や損害賠償の有無と金額
  6. 支払い方法と期限
  7. その他の特記事項
  8. 双方の署名と捺印

示談書は法的な効力を持つ文書なので、可能であれば弁護士に相談しながら作成するのが安心です。

相手との話し合いがうまくいかない場合は、第三者(弁護士など)を間に入れて交渉を進めることも検討しましょう。

示談書を交わした後は、合意した内容を誠実に履行することが大切です。

示談書作成のポイント注意点
具体的な金額・期日の明記曖昧な表現は避け、明確に記載する
双方の合意内容の確認強制や錯誤があると無効になる可能性
法的な専門知識可能なら弁護士にチェックを依頼する
複数部数の作成双方で1部ずつ保管する

婚約解消は辛い決断ですが、誠実に対応し、相手の心情にも配慮することで、お互いの新たな人生のスタートを円滑に切ることができます。

よくある質問

婚約破棄に関して多くの方が抱える疑問について、簡潔にお答えします。

実際の法的判断は個々の状況によって異なるため、専門家への相談もあわせて検討してください。

よくある質問
  • 口約束だけの婚約を断った場合でも婚約破棄とみなされますか?
  • 結婚のために退職した場合の逸失利益について教えてください。
  • 性的不能を理由とした婚約破棄は認められる条件ですか?
  • 婚約破棄の慰謝料相場はどのくらいですか?
  • 浮気が原因の婚約破棄で請求できる賠償金額について教えてください。
  • 女性側からの婚約破棄はどのような流れで進めるのが良いですか?
  • 性格の不一致による婚約破棄でトラブルを避ける方法はありますか?
  • 婚約破棄に関する裁判の期間と費用はどれくらいかかりますか?
  • 婚約破棄問題を弁護士に相談するタイミングはいつが適切ですか?
  • 婚約破棄と離婚の法律上の違いについて教えてください。

口約束だけの婚約を断った場合でも婚約破棄とみなされますか?

口約束だけでも婚約は成立する可能性があります。

「結婚しよう」という約束が交わされ、それを裏付ける行動(結婚式場の下見など)があれば、婚約破棄として法的責任が生じることもあります。

結婚のために退職した場合の逸失利益について教えてください。

結婚を前提に退職した場合、再就職までの期間の収入相当額や、以前の職と再就職先の収入差額を逸失利益として請求できる可能性があります。

退職理由を明確にした書類や給与証明が重要な証拠となります。

性的不能を理由とした婚約破棄は認められる条件ですか?

婚約後に判明した治療困難な性的不能は、正当な婚約破棄理由として認められる可能性があります。

ただし、婚約前から知っていた場合や、治療可能な一時的な状態の場合は認められにくいでしょう。

婚約破棄の慰謝料相場はどのくらいですか?

慰謝料相場は50万円~300万円程度ですが、破棄のタイミングや準備状況によって変動します。

結婚式直前の破棄ほど高額になり、準備がほとんど進んでいない段階では低額となる傾向があります。

浮気が原因の婚約破棄で請求できる賠償金額について教えてください。

浮気をされた側が婚約を破棄する場合、逆に慰謝料を請求できます。

相場は100万円~300万円程度ですが、浮気の程度や証拠の明確さ、社会的地位なども考慮されます。

女性側からの婚約破棄はどのような流れで進めるのが良いですか?

正当な理由があるか確認し、証拠を集めた上で、まずは誠実に話し合いましょう。

理由が不当な場合は相応の補償を提案し、合意後は示談書を作成するのが望ましいです。

性格の不一致による婚約破棄でトラブルを避ける方法はありますか?

性格の不一致は法的に正当な理由とは認められにくいため、誠実な話し合いと適切な補償の提案が重要です。

結婚式のキャンセル料負担や結納金の返還など、具体的な補償内容を明確にし、示談書を作成しましょう。

婚約破棄に関する裁判の期間と費用はどれくらいかかりますか?

調停は3~6か月程度、訴訟になると1年以上かかることもあります。

費用は弁護士費用(着手金20~30万円程度)に加え、印紙代や交通費などが必要です。

勝訴すれば相手方に負担を求められる場合もあります。

婚約破棄問題を弁護士に相談するタイミングはいつが適切ですか?

なるべく早い段階での相談が望ましいです。

特に高額な損害が生じている場合、相手が補償に応じない場合、子どもがいる場合などは、早急に専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

婚約破棄と離婚の法律上の違いについて教えてください。

婚約破棄は「婚姻予約の解除」とされ民法上の明確な規定はなく、判例や学説によって判断されます。

一方、離婚は法律婚を解消する行為で、財産分与や親権など明確な法的手続きが定められています。

まとめ

婚約破棄は単なる別れ話ではなく、法的な責任や補償が絡む複雑な問題です。

婚約破棄が「正当」か「不当」かによって、その後の法的責任が大きく異なります。

正当な理由(相手の不貞行為やDVなど)がある場合は賠償責任を負わないケースが多いですが、不当な理由(単なる気持ちの変化など)では慰謝料などの補償責任が生じます。

婚約破棄された側は、精神的慰謝料やキャンセル料、結納金の返還など様々な補償を請求できる可能性があります。

トラブルに直面したときは、感情的にならず、証拠を集めて早めに弁護士に相談することが解決への近道です。

自分から婚約を解消したい場合も、正当な理由があるか確認し、誠実に話し合いを進め、必要に応じて示談書を作成することが重要です。

婚約破棄のトラブルはデリケートな問題ですが、法的知識を身につけ適切に対応することで、新たな人生のスタートを切るための一歩となるでしょう。

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