面会交流を拒否したい!正当な理由とは?拒否を続けた場合のリスク

離婚や別居後の面会交流について、相手親との接触を避けたいケースは少なくありません。
「子どもが会いたがらない」「元配偶者に会わせたくない」など、面会交流を拒否したい理由は様々です。
しかし、面会交流の拒否には法的リスクが伴うことをご存知でしょうか?
断り続けることで履行勧告や間接強制、最悪の場合は親権変更にまで発展する可能性があります。
一方で、虐待やDVなど「面会交流拒否」が認められるケースも存在します。
この記事では、面会交流拒否の法的根拠や対応方法、拒否し続けた場合のリスクについて解説していきます。
お子さんと元配偶者の関係性に応じた最適な対応策を、専門家の視点から分かりやすく解説します。
面会交流を正当な理由で拒否できるのか?
離婚や別居後の面会交流は、子どもが両親と良好な関係を維持するために重要な制度です。
しかし「元配偶者に会わせたくない」「子どもが会いたがらない」など、様々な理由で面会交流を拒否したいと考える親も少なくありません。
結論から言えば、面会交流の拒否には相応の理由が必要であり、単に「会わせたくない」という感情だけでは認められません。
日本の民法では、親権者でない親にも子どもと面会する権利があることが明確に示されています。
つまり、面会交流は親の「権利」であると同時に、子どもにとっても「利益」となる重要な機会なのです。
とはいえ、DVや虐待の事実がある場合など、面会交流が子どもの福祉を害する恐れがあるケースでは拒否が認められることもあります。
このような事情がない限り、正当な理由なく面会交流を拒否し続けることは法的リスクを伴う行為だといえるでしょう。
次のセクションでは、面会交流拒否の具体的なリスクや認められるケースについて詳しく解説します。
面会交流を拒否し続けた場合に起こりうる結果
面会交流を正当な理由なく拒否し続けると、さまざまな法的対応を取られる可能性があります。
特に調停や審判で面会交流の取り決めが成立している場合、その合意を守らないことは重大な問題となります。
元配偶者との関係が悪化していても、子どもの利益を最優先に考え、法的なリスクを理解しておきましょう。
調停や審判で面会交流の合意が成立している場合
面会交流の取り決めが調停や審判で成立しているにもかかわらず拒否し続けると、相手から以下のような法的措置を取られる可能性があります。
履行勧告
面会交流の約束を守らない場合、最初に行われるのが家庭裁判所からの「履行勧告」です。
これは裁判所から「約束を守るように」と促される制度で、法的強制力はありません。
しかし、履行勧告を無視し続けると、より厳しい措置へと進展する可能性が高いため、無視すべきではありません。
調停委員や裁判官から直接連絡が入り、面会交流の実施を促されることになります。
この段階で真摯に対応し、懸念事項があれば伝えることが重要です。
間接強制
履行勧告に従わない場合、次に「間接強制」という手段が取られることがあります。
間接強制とは、面会交流を実施しない場合に一定の制裁金(過料)を科す制度です。
例えば「面会交流を1回実施しなかった場合、5万円の支払いを命じる」といった内容の決定が下されます。
この制裁金は国庫に納められるのではなく、相手方に直接支払うことになります。
金銭的な負担だけでなく、裁判所の決定に従わないという事実が、今後の親権変更などの審判でマイナス材料となる可能性もあります。
損害賠償(慰謝料)請求
面会交流を長期間拒否し続けると、民事上の損害賠償請求を起こされるリスクもあります。
これは「面会交流権の侵害」として慰謝料を請求されるケースで、実際に認められた判例も存在します。
判例によれば、面会交流を約1年間拒否したことに対して30万円の慰謝料支払いが命じられたケースがあります。
また別の事例では、5年以上の長期にわたって面会交流を拒否した結果、150万円の慰謝料支払いが命じられたケースもあります。
面会交流拒否の期間が長いほど、慰謝料の金額も高額になる傾向があるため注意が必要です。

親権者の変更
面会交流拒否の最も深刻な結果として、親権者変更の可能性があります。
面会交流を長期間かつ正当な理由なく拒否し続けた場合、「子の利益を考慮していない」と判断され、親権者の変更が認められるケースがあります。
実際に過去の判例では、約7年間にわたって面会交流を拒否し続けた母親から父親へと親権者が変更されたケースがあります。
裁判所は「子どもと両親の良好な関係を構築する意思がない」と判断した場合、親権者としての適格性に疑問を呈することがあるのです。
もし正当な理由なく面会交流を拒否し続けると、最終的には子どもと暮らす権利そのものを失うリスクがあることを理解しておきましょう。
面会交流の拒否が認められるケース
面会交流を拒否しても法的に問題にならないケースもあります。
以下では、裁判所が面会交流の拒否を正当と認める可能性が高い状況を解説します。
子供が面会交流を望んでいない
子どもが明確に面会交流を拒否している場合、その意思が尊重されることがあります。
特に中学生以上の子どもの場合、その意見が重視される傾向にあります。
ただし、子どもの意思表示が親の影響を受けていないかが慎重に判断されるため、親が子どもに働きかけたと疑われる状況は避けるべきです。
子どもが自発的に面会を拒否している事実を客観的に示せることが重要になります。
例えば、子どもがカウンセラーや第三者に対して一貫して面会拒否の意思を表明している場合などが該当します。
子供を虐待する可能性があるとみなされる
過去に子どもへの虐待歴がある場合、面会交流の拒否が認められる可能性が高まります。
身体的虐待だけでなく、精神的虐待やネグレクト(育児放棄)なども含まれます。
虐待の疑いがある場合は、児童相談所の記録や診断書など、客観的な証拠を準備することが重要です。
例えば「以前の面会時に子どもを激しく叱責し、精神的に不安定になった」などの事実が証明できれば、面会交流の拒否理由として認められやすくなります。
ただし、単なる噂や憶測だけでは証拠として不十分なため、具体的な事実と証拠の収集が必要です。
以前にDVやモラハラを受けた事実がある
DVやモラハラの被害経験がある場合も、面会交流の拒否が認められる可能性があります。
特に子どもの面前でのDVは子どもへの心理的虐待とみなされ、面会交流の制限理由となります。
DVの証拠となるものには、警察への通報記録、診断書、保護命令の決定書などがあります。
また、モラハラの証拠としては、LINE等のメッセージ記録や音声録音なども有効です。
DVやモラハラがあった場合でも、時間の経過とともに「危険性が低下した」と判断されることもあるため、状況の変化に応じた対応が必要です。
子供を連れ去る可能性がある
子どもを不当に連れ去る可能性が高い場合も、面会交流の拒否理由として認められることがあります。
例えば、以前の面会時に無断で宿泊したり、帰宅時間を著しく遅らせたりした実績がある場合などです。
また、「外国に連れて行く」といった発言があった場合や、実際に外国への移住準備をしている場合なども該当します。
子どもの連れ去りリスクがある場合には、第三者立会いでの面会交流を提案するという妥協案も検討できます。
連れ去りの恐れを裏付ける証拠(メッセージや証言など)を集めておくことも大切です。
面会交流に拒否する正当な理由になれないケース
一方で、以下のようなケースは面会交流を拒否する正当な理由にはならないことが多いです。
養育費が支払われていない
養育費の不払いは面会交流を拒否する正当な理由にはなりません。
法律上、養育費の支払いと面会交流は別個の問題とされています。
「養育費を払わないから会わせない」という対応は、裁判所からは認められない傾向があります。
養育費の問題は面会交流とは切り離して、別途法的手段で解決するべき課題です。
養育費の不払いに対しては、強制執行などの別の法的手段を検討しましょう。
面会交流を条件にすることで、かえって養育費支払いの交渉が難航する可能性もあります。

再婚を理由に子供が新しい家庭に慣れることを望んでいる
再婚して新しい家庭を築いたことは、面会交流を拒否する正当な理由にはなりません。
「新しい父親(母親)になじませたい」という理由で実の親との面会を拒否することは認められないことが多いです。
裁判所は、子どもが両方の親との関係を維持することが健全な成長につながると考えています。
再婚相手との関係構築と実の親との面会交流は両立可能なものとして捉えられます。
再婚を理由に面会交流を拒否すると、かえって親権変更のリスクが高まる可能性があるため注意が必要です。
再婚後の家庭環境の変化については、面会の頻度や方法の調整材料として提案することは可能ですが、完全な拒否の理由にはなりません。

面会交流拒否の方法と実際の流れ
面会交流を拒否したい場合、感情的に拒絶するのではなく、法的な手続きに沿って対応することが重要です。
ここでは、面会交流を拒否するための適切な方法と実際の流れについて解説します。
正当な理由があって面会交流を拒否する場合でも、一方的な判断は避け、法的な手続きを踏むことが後のトラブル防止につながります。
- 関係当事者間での対話
- 面会交流調停・審判の申立て
①関係当事者間での対話
まずは直接または弁護士を通じて、面会交流を拒否する理由を相手に伝えることから始めましょう。
感情的にならず、子どもの利益を最優先に考えながら、冷静に話し合うことが大切です。
例えば「子どもが精神的に不安定になっている」「DVの恐怖から回復していない」など、具体的な理由を説明します。
対話の際は、面会交流の頻度や方法について妥協案を提示することも検討しましょう。
例えば「当面は第三者の立会いがある場所での面会にしてほしい」といった提案は、完全拒否よりも受け入れられやすいです。
対話の記録は必ず残しておくことをお勧めします。
②面会交流調停・審判の申立て
当事者間での話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所での調停・審判の場で解決を図ることになります。
相手方から面会交流の調停申立てがあった場合は、しっかりと応じる必要があります。
また、自分から積極的に調停を申し立てることで、面会交流を拒否する正当な理由を裁判所に理解してもらうことも可能です。
調停では以下のような点について話し合いが行われます:
- 面会交流の頻度(月1回、年数回など)
- 面会の方法(直接会う、オンライン、手紙など)
- 面会場所(自宅、公共施設、面会交流支援団体など)
- 面会時の条件(第三者の立会いの有無など)
調停では、面会交流を拒否する理由の証拠(診断書、通報記録など)を提出し、主張の裏付けをすることが重要です。
調停で合意に至らない場合は審判に移行し、裁判官が面会交流の可否や条件を決定します。
審判では、より厳格な証拠に基づいた判断がなされるため、事前の証拠収集が非常に重要になります。
特に子どもの意思を尊重してもらいたい場合は、年齢に応じて子どもの意見聴取が行われることもあります。
面会交流調停を相手から申し立てられた時にとるべき行動とは
元配偶者から面会交流調停を申し立てられたとき、どう対応すべきか悩む方は少なくありません。
ここでは、調停申立てを受けた際の適切な対応方法について解説します。
調停の呼び出しを無視せず、冷静に対応することが後のトラブル回避につながります。
- 無視をしないでしっかり向き合う
- 感情的にならないよう心がける
- 自分の意見を整理しておく
無視をしないでしっかり向き合う
まず大切なのは、調停の呼び出しを無視しないことです。
裁判所からの呼び出し状が届いたら、指定された日時に必ず出席しましょう。
調停を無視し続けると、審判に移行し、こちらの言い分を聞いてもらえないまま決定が下される恐れがあります。
また、調停に誠実に対応しない姿勢は、後の親権変更などの場面でマイナス評価につながる可能性があります。
出席が難しい場合は、必ず裁判所に連絡して日程変更を申し出ましょう。
不安がある場合は、弁護士に依頼して代理人として同席してもらうことも検討すると安心です。
感情的にならないよう心がける
調停の場では、感情的にならず冷静に対応することが重要です。
元配偶者への怒りや不満をぶつけるのではなく、あくまで子どもの利益を中心に考えた発言を心がけましょう。
例えば「あなたには会わせたくない」ではなく「子どもが不安を感じているため、段階的な交流が望ましい」といった建設的な表現を選びます。
感情的な対立は調停の長期化を招き、結果的に子どもにも負担をかけてしまいます。
調停委員は両者の感情よりも、子どもにとって何が最善かという視点で判断します。
自分の主張が難しい場合でも、妥協案を検討する柔軟さも大切です。
自分の意見を整理しておく
調停に臨む前に、自分の意見や主張を整理しておくことが大切です。
面会交流を拒否する理由、もしくは条件付きで認める場合の条件などを明確にしておきましょう。
拒否の理由には具体的な根拠(虐待やDVの事実など)を示せるよう、証拠も準備しておくことが重要です。
また、完全拒否ではなく「第三者の立会いがある場合のみ」など、条件付きの提案も考えておくと建設的な話し合いができます。
メモを作成して要点をまとめておくことで、調停の場で混乱せず自分の意見を伝えやすくなります。
可能であれば、調停前に弁護士に相談し、法的な観点からのアドバイスを受けておくことも有効です。
面会交流拒否に関する弁護士相談のメリット
面会交流の拒否を検討する場合や、すでに拒否している状況で調停申立てをされた場合、弁護士への相談が非常に有効です。
法的知識のない状態で対応すると、思わぬ不利益を被るリスクがあります。
面会交流問題は感情的になりやすいからこそ、冷静な第三者である弁護士のサポートが重要となるのです。
ここでは、面会交流拒否に関して弁護士に相談するメリットを解説します。
- 当事者より冷静に話し合いができる
- 公正証書の作成をサポートしてもらえる
- 調停・審判・裁判で代理人として対応してもらえる
当事者より冷静に話し合いができる
元配偶者との間には感情的なしこりが残っていることが多く、直接の話し合いが難しいケースがほとんどです。
弁護士は感情に左右されない第三者として、冷静に交渉を進めることができます。
例えば「会わせたくない」という感情だけでなく、「子どもの福祉」という観点から適切な主張を組み立ててくれます。
また、法的に認められにくい主張を避け、より受け入れられやすい妥協案を提案してくれることも大きなメリットです。
当事者同士の直接対話が難しい場合でも、弁護士を通じた交渉なら感情的な衝突を避けながら解決に向けて進められます。
相手方に弁護士がついている場合は特に、こちらも弁護士に依頼して対等な立場で交渉することが重要です。
公正証書の作成をサポートしてもらえる
面会交流の条件について合意ができた場合、その内容を公正証書にすることで法的な効力を持たせることができます。
弁護士は公正証書作成のための適切な条件設定や文言選びをサポートしてくれます。
例えば「子どもの体調不良時の対応」「面会場所の変更条件」など、細かい取り決めも漏れなく盛り込むことができます。
あいまいな表現や解釈の余地がある条件は後々のトラブルの原因となるため、弁護士のチェックは重要です。
公正証書には「強制執行認諾条項」を付けることで、相手が約束を守らない場合の強制力を持たせることもできます。
こうした専門的な手続きも弁護士がサポートしてくれるため、自分で行うよりも安心かつ確実です。
調停・審判・裁判で代理人として対応してもらえる
面会交流の調停や審判の場で弁護士が代理人として出席することで、法的な主張を的確に行うことができます。
自分一人で裁判所に行くと緊張して言いたいことが言えなかったり、法的な質問に適切に答えられなかったりする場合があります。
弁護士は数多くの面会交流ケースを扱っており、どのような主張が認められやすいかの知見を持っています。
例えば、DVや虐待の証拠提出の方法や、子どもの意思を尊重してもらうための効果的な主張方法を熟知しています。
また、調停委員や裁判官とのコミュニケーションにも慣れているため、こちらの主張を効果的に伝えることができます。
場合によっては、自分が元配偶者と直接対面しなくても済むよう、代理出席の手配をしてもらえることもメリットの一つです。

よくある質問
面会交流の拒否に関して、多くの方が同じような疑問や不安を抱えています。
ここでは、面会交流拒否についてよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
皆さんの疑問解決の参考にしてください。
- 祖父母との面会交流を拒否したい場合、正当な理由は必要ですか?
- 面会交流時に元配偶者が子どもに悪口を言っている場合、拒否できますか?
- 元夫との面会交流について直接話したくない場合、弁護士に代行してもらえますか?
- 面会交流を拒否し続けたら親権者変更の判例はありますか?
- 中学生の子どもが父親との面会交流を拒否している場合、認められる方法はありますか?
- 面会交流を拒否すると養育費の支払いに影響がありますか?
- 再婚後に面会交流を拒否すると不利になる場合を教えてください。
- 面会交流を拒否された場合の損害賠償請求について教えてください。
- モラハラがあった場合、面会交流拒否の正当な理由になりますか?
- どうしても面会交流をしたくない時の適切な対応方法はありますか?
まとめ
面会交流の拒否には相応の法的リスクがあることを理解しておく必要があります。
DVや虐待の事実がある場合など、拒否が認められるケースもありますが、単なる感情的な理由では認められないことが多いです。
正当な理由なく面会交流を拒否し続けると、履行勧告、間接強制、損害賠償請求、最悪の場合は親権者変更にまで発展する可能性があります。
面会交流の問題に直面したときは、感情的にならず、まずは弁護士に相談することをお勧めします。
専門家のサポートを受けながら、子どもの福祉を最優先に考えた対応を心がけましょう。