離婚後の養育費を払わなくていい場合とは?免除が認められる8つのケース

離婚後も子どもへの養育費を支払うのは親としての義務ですが、状況によっては「養育費を払わなくていい場合」があることをご存知でしょうか?
元配偶者から「あなたは養育費を払わなくていい」と言われたとしても、その合意が法的に有効かどうかは別問題です。
収入がなくなった、生活保護を受給している、子どもが成人した場合など、養育費を支払わなくてもいいケースが実際に存在します。
また、養育費の支払額を減額できる可能性がある状況もあります。
当記事では、離婚後に養育費を払わなくていい場合や減額が認められるケースについて詳しく解説していきます。
養育費についての不安や疑問を解消できるよう、法的根拠や具体例をもとに分かりやすく説明します。
あなたの状況に合わせた対応方法を見つけるためにも、ぜひ最後までお読みください。
離婚後の養育費を支払うことは親の義務
離婚後も子どもの養育費を支払うことは、親としての基本的な義務です。
民法第766条及び第877条では、親は未成熟の子どもに対して養育費を支払う義務があることが明確に定められています。
この義務は、たとえ離婚して親権者でなくなったとしても免除されることはありません。
養育費は子どもが健全に成長するためのお金であり、子どもの権利として保障されているものです。
親が養育費を払わなくていい場合があるとすれば、それは法律や裁判所が認める特別な事情がある場合に限られます。
「養育費を払わなくていい場合」を自己判断で決めることはできず、正当な理由がなければ支払い義務から逃れることはできないのです。
とはいえ、現実には様々な事情により養育費の支払いが困難になるケースや、法的に支払い義務が免除される状況も存在します。
次のセクションでは、具体的にどのような場合に養育費を支払わなくてもよいのか、その条件について詳しく見ていきましょう。
養育費を支払わなくてもいい8つのケース
養育費の支払いは親の義務ですが、法的に認められた特定の条件下では支払わなくてもよい場合があります。
ここでは養育費を支払わなくていい8つのケースについて具体的に解説します。
1. 収入がまったく得られない正当な理由がある場合
重い病気やケガで働けなくなり、収入が途絶えてしまった場合は養育費の支払いが難しくなります。
特に長期入院や障害が残るような状況では、自分の生活を維持するのも困難な状態となるため、支払い義務の免除や減額が認められる可能性があります。
ただし、一時的な病気や軽度のケガの場合は、回復後に支払いを再開する必要があります。
また、自己都合退職や怠慢による収入減少は正当な理由とは認められません。
免除を希望する場合は、医師の診断書など客観的な証明書類を用意して元配偶者と協議するか、家庭裁判所に減額、免除の調停を申し立てましょう。
2. 生活保護を受給している場合
生活保護を受給している場合、基本的には養育費を支払う経済的余裕がないと判断されます。
生活保護制度は最低限の生活を保障するためのセーフティネットであり、受給者には養育費を支払う資力がないと認められるケースが多いのです。
ただし、生活保護から脱却して収入が得られるようになった場合は、養育費の支払い義務が復活します。
生活保護受給中に養育費の免除を求める場合は、生活保護受給証明書を準備して元配偶者と協議しましょう。
合意が得られない場合は、家庭裁判所での調停手続きが必要になることもあります。
3. 元配偶者の方が収入が多い場合
元配偶者の収入が自分より著しく高い場合、養育費の支払いが免除されることがあります。
例えば、元配偶者が年収1,000万円で自分が年収300万円という大きな収入格差があるケースです。
養育費の算定は双方の収入や子どもの年齢などを総合的に考慮するため、元配偶者の経済力が十分にあれば、自分の支払い義務が軽減または免除される可能性があります。
ただし、単に「元配偶者の方が収入が多い」というだけでは免除の理由として不十分です。
明らかな収入格差があり、元配偶者だけで子どもの養育に必要な経済的負担を十分に担えることが条件となります。
4. 支払を免除することに元配偶者の合意が得られた
元配偶者との間で養育費の支払いを免除する合意ができれば、支払わなくてもよい場合があります。
このような合意は、離婚協議書や公正証書などの文書で明確にしておくことが重要です。
ただし、子どもの福祉に反する内容の合意は無効となる可能性があるため注意が必要です。
例えば「養育費を一切支払わない」という合意が、子どもの生活水準を著しく低下させる場合は、後に養育費請求の訴えが起こされる可能性があります。
また、財産分与で多めに資産を渡すことを条件に養育費を免除するという合意の場合も、書面で明確にしておきましょう。
5. 子どもが元配偶者の再婚相手と養子縁組を結んだ場合
元配偶者が再婚し、子どもが再婚相手(継父または継母)と養子縁組を結んだ場合、実親の養育費支払い義務は終了します。
養子縁組により法律上の親子関係が新たに成立し、再婚相手が法的な親としての扶養義務を負うことになるためです。
ただし、養子縁組が成立した証明として、戸籍謄本などの公的書類が必要になります。
元配偶者からの通知だけでは、養育費支払いの免除条件として不十分な場合があります。
なお、養子縁組が後に解消された場合、状況によっては養育費支払い義務が復活する可能性もあります。
6. 配偶者の連れ子で、養子縁組を解消した場合
元配偶者の連れ子と養子縁組をしていた場合、離婚と同時に養子縁組を解消すれば養育費の支払い義務はなくなります。
血縁関係のない子どもとの養子縁組は、離婚時に協議離縁することで親子関係を解消できるためです。
ただし、養子縁組の解消には家庭裁判所での手続きが必要です。
また、長期間親子として生活してきた場合、子どもの福祉の観点から養子縁組解消後も一定の扶養義務が認められるケースもあります。
養子縁組解消と養育費免除について不安がある場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
7. 子どもが成人年齢に達した
子どもが成人年齢(現在は18歳)に達した場合、基本的には養育費の支払い義務が終了します。
2022年4月から成人年齢が20歳から18歳に引き下げられましたが、養育費の支払い期間は当事者間の取り決めによるため、注意が必要です。
多くの場合、離婚協議書や調停調書、審判書などで「子どもが〇歳になるまで」や「高校卒業まで」などと支払期間が定められています。
また、子どもが大学や専門学校に進学する場合、経済的に自立していないため、合意があれば20歳を超えても養育費の支払いが継続することがあります。
離婚時の取り決めを確認し、不明点があれば弁護士に相談することをおすすめします。
8. 子どもが就職して経済的に自立できた
子どもが就職して経済的に自立した場合、養育費の支払いは不要になることが多いです。
これは子どもの経済的自立により、親の扶養を必要としない状態になったと判断されるためです。
たとえ子どもが18歳未満でも、正社員として就職し十分な収入を得ているならば、養育費の支払いが免除される可能性があります。
ただし、アルバイトやパートタイムでの就労は通常「経済的自立」とは見なされません。
また、子どもが結婚した場合も、経済的に自立したと考えられ、養育費の支払い義務が消滅するケースが多いです。
養育費の支払い停止を考える場合は、元配偶者に子どもの状況を伝え、協議することが望ましいでしょう。
養育費の減額が認められる可能性がある6つのケース
完全に養育費を支払わなくていい場合だけでなく、金額を減らせる可能性があるケースもあります。
ここでは養育費の減額が認められやすい6つの状況について解説します。
1. 支払い側の収入が避けられない理由で減少した
会社の倒産や勤務先の業績悪化により給与が下がった場合、養育費の減額が認められる可能性があります。
これは自分の意思によらないやむを得ない事情による収入減少と判断されるからです。
例えば、コロナ禍での給与カットや失業、会社の営業不振による降格などが該当します。
ただし、自己都合退職や単なる転職による一時的な収入減少は、通常、減額理由として認められません。
減額を希望する場合は、収入が減少したことを証明できる給与明細や源泉徴収票などの書類を用意し、元配偶者と協議することが必要です。
2. 元配偶者の収入額が上がった
元配偶者の収入が大幅に増加した場合、養育費の減額が認められることがあります。
養育費は双方の経済状況を考慮して決定するため、元配偶者の経済力が向上すれば自分の負担割合が変わる可能性があるのです。
例えば、離婚当時はパートだった元配偶者が正社員となり年収が倍になったようなケースです。
ただし、元配偶者の収入増加を理由に減額を求める場合は、具体的な金額や状況の証明が必要になります。
元配偶者が自身の収入情報を共有してくれない場合は、弁護士に相談して調停手続きを検討するとよいでしょう。
3. 元配偶者が再婚した場合
元配偶者が再婚すると、新しいパートナーからの経済的支援が期待できるため、養育費の減額が認められることがあります。
再婚により世帯全体の経済状況が改善されれば、子どもの養育にかかる経済的負担の分担比率が変わる可能性が出てくるのです。
ただし、元配偶者の再婚だけでは自動的に養育費が減額されるわけではありません。
再婚相手の収入や生活水準、子どもの養育への関わり方などを総合的に考慮して判断されます。
特に再婚相手が子どもと同居し、日常的に養育に関わっている場合は、減額が認められる可能性が高まります。

4. 支払い側が再婚して子どもが生まれた
支払い側が再婚して新たに子どもが生まれた場合、養育費の減額が認められることがあります。
これは新しい家族を養うための経済的負担が増加するためです。
法律上、すべての子どもに対して平等に扶養義務があるため、新しい子どもの誕生は養育費の見直し理由として認められやすいです。
ただし、再婚や新たな子どもの誕生を理由に養育費をゼロにすることは通常認められません。
新しい家族状況を踏まえた上で、前の結婚で生まれた子どもにも適切な養育費を支払う必要があります。
5. 支払い側が再婚相手の子どもと養子縁組を結んだ
再婚相手の連れ子と養子縁組を結んだ場合、新たな扶養義務が生じるため養育費の減額が認められることがあります。
養子縁組により法律上の親子関係が成立すると、その子どもに対しても実子と同様の扶養義務を負うことになるのです。
特に養子となった子どもが未成年の場合、経済的支援の必要性が高く、前婚の子どもへの養育費との調整が必要になります。
減額を求める際は、養子縁組の事実を証明する戸籍謄本や、家計の状況を示す資料を準備しましょう。
ただし、養子となった子どもが成人している場合や経済的に自立している場合は、減額理由として認められない可能性があります。
6. 支払い側の支出が避けられない理由で増えた
病気やケガの治療費など、避けられない理由で支出が大幅に増えた場合、養育費の減額が認められることがあります。
特に長期的な治療が必要な病気や高額な医療費がかかる状況では、生活維持のための支出が優先されるケースもあるでしょう。
また、親の介護費用や自然災害による住居の修繕費など、社会通念上やむを得ない支出も減額理由として認められる可能性があります。
ただし、趣味や嗜好品への支出増加、自発的なローン契約などは減額理由として認められません。
減額を希望する場合は、支出増加の必要性や避けられない事情を客観的に証明できる書類(診断書や領収書など)を準備しましょう。
養育費の免除・減額を認めてもらうために行うこと
養育費を払わなくていい場合や減額したい場合、どのような手続きを取ればよいのでしょうか。
ここでは具体的な対応方法について解説します。
- 相手側と協議して交渉する
- 養育費減額のための調停を申立てる
相手側と協議して交渉する
養育費の免除や減額を求める場合、まずは元配偶者と直接話し合うことが基本です。
円満な解決のためには、誠実な話し合いが最も効果的な方法といえるでしょう。
交渉の際は、収入が減少した証拠や病気の診断書など、客観的な資料を用意することが重要です。
感情的な対立を避け、冷静に現状を説明し、子どもの福祉を最優先に考えて話し合いましょう。
合意できた場合は、必ず書面(協議書)を作成し、お互いが署名、押印することをおすすめします。
書面に残すことで、後々のトラブルを防ぐことができます。

養育費減額のための調停を申立てる
話し合いで合意に至らない場合は、家庭裁判所に養育費減額調停を申し立てることができます。
調停は裁判官と調停委員が間に入り、双方の言い分を聞きながら合意形成を目指す手続きです。
調停を申し立てるには、家庭裁判所に「養育費減額調停申立書」を提出します。
申立書には減額を求める理由や希望する金額、現在の経済状況などを記載する必要があります。
調停の申立てには収入印紙代(1,200円)や郵便切手代などの費用がかかりますが、比較的安価です。
また、弁護士に依頼せずに自分で手続きを行うこともできます。
調停で合意に至った場合は「調停調書」が作成され、これは裁判と同じ効力を持ちます。
調停でも合意できない場合は、審判や訴訟に進むこともありますが、その場合は弁護士に相談することをおすすめします。
養育費の問題は子どもの生活に直結する重要な問題なので、専門家のアドバイスを受けながら適切に対応しましょう。
養育費の免除・減額が難しいケース
養育費を払わなくていい場合や減額できる場合もありますが、逆に認められにくいケースもあります。
ここでは養育費の免除や減額が難しい状況について解説します。
- 子どもとの面会を拒否されている
- 支払い側の収入減少が予測された
- 借金を抱えている
- 自己都合による退職をした
1. 子どもとの面会を拒否されている
元配偶者が子どもとの面会交流を拒否しているからといって、養育費の支払いを拒むことはできません。
面会交流と養育費は法律上まったく別の問題として扱われるのです。
養育費は子どもの健全な成長のために必要な費用であり、面会できるかどうかとは関係なく支払う義務があります。
面会交流を拒否されている場合は、養育費の支払いを止めるのではなく、家庭裁判所に面会交流の調停を申し立てるなど、別途対応を検討しましょう。
面会交流と養育費を条件付けることは、結果的に子どもの福祉を損なう可能性があることを理解することが大切です。

2. 支払い側の収入減少が予測された
離婚時点で予測できた収入減少は、養育費免除や減額の正当な理由にはなりにくいです。
例えば、離婚時に「数年後に定年退職する」ことが分かっていた場合、その後の収入減少は予測可能な事情とみなされます。
養育費の取り決め時に、将来の収入変動を考慮して金額設定や支払期間を定めるべきだったという判断がなされるのです。
また、離婚時に「将来的に転職する予定」と伝えていた場合も同様に、養育費減額の理由として認められにくいでしょう。
離婚協議の段階で将来的な収入変動の可能性がある場合は、その旨を明記した養育費の取り決めをしておくことが重要です。
3. 借金を抱えている
借金があるという理由だけでは、養育費の免除や減額は認められないケースがほとんどです。
司法の場では、子どもの養育費は借金返済よりも優先すべきとされています。
特に、ギャンブルやローン、クレジットカードの支払いなど自己責任による債務の場合、養育費減額の理由としては認められません。
ただし、病気や事故による高額な医療費など、やむを得ない理由で発生した借金の場合は、状況によって考慮される可能性もあります。
いずれにせよ、借金問題と養育費の両立が困難な場合は、法律専門家に相談して適切な解決策を見つけることが大切です。
4. 自己都合による退職をした
自分の意思で退職して収入が減った場合、養育費の免除や減額は認められにくいです。
裁判所は、自己都合退職は「避けられない理由」とはみなさない傾向にあります。
例えば、職場の人間関係に悩んで退職した、より条件の良い仕事を探すために退職したなどの理由は、養育費減額の正当な理由として認められません。
会社都合の解雇や倒産、健康上の理由による退職といった避けられない事情がある場合とは区別されるのです。
自己都合で退職する際は、子どもへの養育費を支払い続ける責任があることを念頭に置き、事前にしっかりと計画を立てることが重要です。
また、転職などでやむを得ず一時的に収入が減少する場合は、元配偶者に事前に説明し、理解を求めることも大切でしょう。
一度減額された養育費が再び請求される具体的な事例
養育費が一度減額されたとしても、状況の変化によって再び増額される可能性があります。
ここでは、減額された養育費が再び請求されるケースを解説します。
- 元配偶者が離婚して子どもと再婚相手の養子縁組が解消された
- 支払い側が再婚後に離婚して扶養家族が少なくなった
- 支払い側の収入が増加した
- 支払い側の支出が少なくなった
1. 元配偶者が離婚して子どもと再婚相手の養子縁組が解消された
元配偶者の再婚相手と子どもが養子縁組をしたことで養育費が減額されていた場合、その再婚が破綻すると状況が変わります。
再婚相手との離婚により養子縁組が解消されると、子どもの扶養義務者が再び実親のみとなるため、養育費の支払い義務が元の状態に戻るのです。
例えば、元配偶者の再婚に伴い子どもが継父と養子縁組を結んだため養育費が減額されていたが、その後再婚が破綻して養子縁組が解消された場合が該当します。
このケースでは、元配偶者からの申立てにより、養育費の増額が認められる可能性が高いでしょう。
養子縁組の解消は戸籍謄本で確認できるため、元の養育費額に戻すよう求められた場合、正当な理由なく拒むことは難しいことを覚えておきましょう。
2. 支払い側が再婚後に離婚して扶養家族が少なくなった
再婚して新たに子どもが生まれたことを理由に養育費が減額されていた場合、その再婚が破綻すると状況が変わります。
再婚相手との離婚により扶養家族が減少すると、経済的負担が軽減されたとみなされ、前婚の子どもへの養育費増額が求められることがあります。
特に、再婚相手と子どもが実家に戻るなどして経済的関係が薄れた場合、前婚の子どもにより多くの経済的支援をする余力があると判断されるでしょう。
また、再婚相手が子連れで、その子と養子縁組をしていた場合も、離婚と同時に協議離縁することで扶養義務がなくなれば、前婚の子どもへの養育費増額を求められる可能性があります。
このような状況変化を元配偶者が知った場合、養育費の増額調停を申し立てられることを念頭に置いておくべきでしょう。
3. 支払い側の収入が増加した
経済的困難を理由に養育費が減額されていた場合、その後収入が回復すると増額を求められることがあります。
例えば失業を理由に養育費を減額していたが、再就職して以前より高収入を得られるようになった場合が典型的です。
また、昇進や転職によって年収が大幅に増えた場合も、元配偶者が情報を入手すれば養育費の増額を求められる可能性があります。
特に子どもの教育費など、成長に伴って必要な費用が増える時期と重なると、増額の必要性が高く判断されることもあるでしょう。
収入が回復または増加した場合は、元配偶者からの増額要求に備えて、適切な対応を検討しておくことが望ましいです。
4. 支払い側の支出が少なくなった
高額な医療費や住宅ローンなどの支出を理由に養育費が減額されていた場合、その負担が軽減されると状況が変わります。
例えば、長期療養が必要な病気が完治して医療費負担がなくなった場合、養育費の増額を求められる可能性があります。
また、親の介護が終了して介護費用の負担がなくなった場合や、住宅ローンの返済が完了した場合なども同様です。
固定費の減少により可処分所得が増えたとみなされると、子どもの養育費に回せる経済的余裕があると判断されることがあります。
このような状況変化は、源泉徴収票や確定申告書などから推測できるため、元配偶者が情報を入手して養育費の増額を求めてくる可能性を認識しておきましょう。
養育費を支払わない場合の3つのリスク
正当な理由なく養育費を支払わない場合、様々なリスクや不利益が生じる可能性があります。
ここでは、養育費を支払わないことで発生する主なリスクについて解説します。
- 遅延損害金を請求されることがある
- 財産の差し押さえをされる可能性がある
- 正当な理由なく裁判所からの呼出しに応じないと刑事罰の対象になることも
1. 遅延損害金を請求されることがある
養育費の支払いが遅れると、元配偶者から遅延損害金を請求される可能性があります。
遅延損害金の利率は年5%程度で設定されることが一般的です。
例えば、月5万円の養育費を1年間滞納した場合、約2万5千円の遅延損害金が発生する計算になります。
長期間滞納すると、元の養育費に加えて多額の遅延損害金も支払わなければならなくなるため、経済的負担は更に大きくなります。
また、公正証書で養育費の取り決めをしている場合、遅延損害金についても明記されていることが多く、その場合は強制執行の対象となることもあります。

2. 財産の差し押さえをされる可能性がある
養育費の支払いを長期間滞納すると、財産の差し押さえを受ける可能性があります。
特に公正証書や裁判所の調停調書がある場合、強制執行の手続きが簡略化されるため、滞納すると素早く差し押さえが実行されることがあります。
差し押さえの対象となるのは、預貯金、給与、不動産、自動車など、あなたが所有する財産全般です。
特に給与の差し押さえは、勤務先に滞納事実が知られることになり、社会的信用にも影響を及ぼす恐れがあります。
また、差し押さえ手続きに伴う費用も滞納者の負担となるため、元々の滞納金額に加えて追加の出費が発生します。

3. 正当な理由なく裁判所からの呼出しに応じないと刑事罰の対象になることも
養育費の未払いにより裁判所から呼び出しを受けた場合、これに応じないと制裁を受ける可能性があります。
特に正当な理由なく出頭命令に従わない場合、過料や罰金などの制裁が科されることがあります。
裁判所は「履行勧告」や「履行命令」といった手続きを通じて、養育費の支払いを促します。
それでも支払いに応じず、裁判所の命令にも従わない場合は、最終的に10万円以下の過料に処される可能性があるのです。
また、正当な理由なく養育費を支払わない行為は、「児童扶養手当」の返還請求の対象となることもあります。
これは、元配偶者が児童扶養手当を受給している場合、本来あなたが支払うべき養育費を国が立て替えて支給しているとみなされるためです。
養育費の支払いを正当な理由なく拒否することで生じるリスクは小さくないため、経済的に困難な状況に陥った場合は、早めに相談や対応を検討することが重要です。
よくある質問
養育費を払わなくていい場合について、読者の皆さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
- 養育費を払わない場合に差し押さえされるのはどんなケースですか?
- 養育費の免除が認められる条件を教えてください。
- 離婚後、元配偶者が養育費を払わないと言った場合の対処方法はありますか?
- 養育費を請求できる期間はいつまでですか?
- 養育費の減額を申し立てる条件について教えてください。
- 養育費が払われない場合、弁護士に相談すべきですか?
- 養育費を一括で支払う方法はありますか?
- 子どもが何歳になったら養育費を払わなくていいのですか?
- 公正証書があるのに養育費を払わない元配偶者への対応方法を教えてください。
- 離婚時に養育費を払わない親の割合はどのくらいですか?
まとめ
養育費は子どもの健全な成長のために親が負う法的義務ですが、特定の条件下では支払いが免除されたり減額されたりすることがあります。
収入がまったく得られなくなった場合や、生活保護を受給している場合、子どもが成人に達した場合など、法的に認められた「養育費を払わなくていい場合」が存在します。
また、やむを得ない理由で収入が減少した、再婚して新たな子どもが生まれたなどの場合は、養育費の減額が認められる可能性があります。
ただし、面会交流を拒否されていることや自己都合による退職は、養育費を払わなくていい理由にはなりません。
養育費の免除や減額を求める場合は、元配偶者との協議や家庭裁判所での調停など、適切な手続きを経ることが重要です。
正当な理由なく養育費を支払わないと、遅延損害金の請求や財産の差し押さえなどのリスクがあることも覚えておきましょう。
どのような状況であっても、子どもの最善の利益を第一に考え、適切に対応することが大切です。